利用報告書
課題番号(Application Number):S-15-NR-0021
利用形態(Type of Service):機器利用
利用課題名(日本語) :銅硬化物の電気・磁気特性の評価
Program Title (English) :Transport properties of Cu pastes
利用者名(日本語) :高見剛1), 大西重克2)
Username (English) :T. Takami1), S. Ohnishi2)
所属名(日本語) :1) 大阪大学大学院理学研究科, 2) 積水化学工業株式会社
Affiliation (English) :1) Department of Physics, Osaka University, 2) SEKISUI CHEMICAL Co., Ltd.
1.概要(Summary )
熱硬化型ペーストに含まれる銀は、採掘するために多くのエネルギーや材料を消費し、クラーク数も小さいために銀ペーストも必然的に高価格になり、さらに銀自体のマイグレーション耐性は非常に悪く、これらの欠点を克服する代替材料として銅ペーストの開発を行った。熱硬化型のペーストにおいても、銀と同じ高い導電率の実現が目標となるが、銅は酸化しやすいため粉体間の接触抵抗が大きくなるという問題点を有していた。銅粉の耐酸化性を克服するために銅粉から炭素繊維(CNT)を生成させた粒子が有効であると着想し、CNT触媒(Co)を含む銅合金中にCoを析出させ、そのCoからCVD法によりCNTを成長させる事に成功した。本課題では、この銅硬化物の電気抵抗率と熱電能の温度依存性を測定した。また、比較のために、銀硬化物とカーボン硬化物の電気抵抗率も測定した。
2.実験(Experimental)
PPMS (カンタム・デザイン株式会社)付属のTTOを用いて、ゼーベック係数と電気抵抗率を4端子法で測定した。3つの試料(CNT生成Cu硬化物、銀硬化物、カーボン硬化物)を2-400 Kの温度領域で測定した。なお、測定には基盤に固形回路を作成し、この部分に市販の接着用銀ペーストで4本の端子(銅線、金の細線)と接続した。
3.結果と考察 (Results and Discussion)
◆ CNT生成Cu硬化物
室温での電気抵抗率は0.23 mcmと小さな値を示した。温度依存性は金属的だか、20 K付近で極小値を示した。20 K以下では、Kondo散乱が起きており、これには触媒として用いたCoナノ粒子が寄与している可能性がある。一方、熱電能は負の値を示し、フィラーとCoナノ粒子の間の伝導が示唆された。
◆ 銀硬化物
電気抵抗率は典型的な金属的な温度依存性を示した。また、室温では0.11 mcmであった。
◆ カーボン硬化物
電気抵抗率は導電性硬化物としては大きな値を示した。20 K以下では可変領域ホッピング伝導、 170 K以上では熱活性型の半導体的振る舞いを示した。
4.その他・特記事項(Others)
測定に関して、小島広孝特任助教および岡島康雄技術職員にお世話になり、厚く御礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 高見剛、大西重克、中壽賀章
応用物理学会第76回秋季学術講演会
平成27年9月14日.
(2) 大西重克、中川清晴、中壽賀章、鳥山貴大、金有泰
第34回電子材料シンポジウム
平成27年7月15日.
6.関連特許(Patent)
(1) 大西重克,中壽賀章,中川清晴,鳥山貴広,金有泰
“金属-炭素繊維複合体及びその製造方法、並びに炭素繊維及びその製造方法”,
公開日平成27年2月16日、特願2013-160479,
出願日;H25年8月1日/公開日;H27年2月16日
(2) 大西重克、“伝導性フィラー及びその製造方法、並びに伝導性ペースト及びその製造方法”,
優先日H25年8月1日、特許第5756887号







