利用報告書

銅粉末酸化防止、金属粉末流動性向上
有馬 晋二
ヒカリ素材工業株式会社

課題番号 :S-16-SH-0008・0024
利用形態 :共同研究型
利用課題名(日本語) :銅粉末酸化防止、金属粉末流動性向上
Program Title (English) :Studies to prevent the oxidation of copper powders and to improve the fluidity of the metal powders
利用者名(日本語) :有馬 晋二
Username (English) :SHINJI ARIMA
所属名(日本語) :ヒカリ素材工業株式会社
Affiliation (English) :HIKARI MATERIAL INDUSTRY CO.LTD

1. 概要(Summary )
課題A:銅粉末の酸化防止:弊社で製造した純銅粉末において、製品ロットによる違いや、同ロットかつ保存状態が同じでも製品に酸化の進行に違いが認められる。それぞれの場合の酸化進行の違いを明らかにするために含有される元素分析を行った。
課題B:金属粉末の流動性向上:市販の3Dプリンター用純正粉末は、弊社が製造したままの粉末に比べ流動性が良い。その原因を明らかにする目的で、弊社の粉末と3Dプリンター用純正粉末の化学成分などの分析を行った。

2. 実験(Experimental)
課題A:純銅粉末光沢品と赤色変色品を下記5項目について実験・分析した。
① EPMA ②SEM ③XPS ④大気暴露実験⑤ ICP
課題B:市販の3Dプリンター純正粉末を下記2項目分析した。
①SEM ②XPS

3.結果と考察(Results and Discussion)
課題A:
①EPMA:Cu以外の元素の検出なし。
②SEM:表面の形態に若干差があった。
③XPS:赤色変色品の酸素含有量は、銅光沢品の約4倍以上であった。
④銅光沢品を水没大気暴露試験したが変色無し。
⑤ICP-MS:Cu中のFe量は銅光沢品では(1.18 ppb)、赤色変色品のそれ(4.69 ppb)に比べて4分の1であった。
銅光沢品は、粉末表面においてある一定以上の酸化を抑制する何らかの作用が働いていると推察された。すなわち、図1に例示するXPS分析結果のとおり、銅光沢品と赤色変色品では明らかにCuO膜の厚さに差が存在し、それは前者で6nm、後者で24nm程度であった。

図1 XPS分析による測定された銅粉末の酸素ピーク
(Ar,1kV,30sスパッタを6回(表面除去量約2nm/回)実施した例)

ICP分光分析では、極めて微量のFe値の差があったが、これが酸化の度合いを左右する原因と断定するには至らなかった。検査数量を増やすなどして分析を継続して行きたい。
課題B:
XPS分析より、3Dプリンター用純正金属粉末にはケイ素酸化物が含有されていることがわかった。すなわち、同粉末にはそれの流動性を向上させるために、ケイ素酸化物を含む表面処理が施されていると推測される。

4.その他・特記事項(Others)
清水保雄先生、森本研究員殿に技術指導と測定をして頂きました。感謝申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
無し

6.関連特許(Patent)
無し

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