利用報告書

開裂活性分子の加熱によるスピン生成
燒山佑美
大阪大学大学院工学研究科

課題番号 :S-19-MS-1073
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :開裂活性分子の加熱によるスピン生成
Program Title (English) :Spin generation by heat-mediated homo-cleavage of C-C bond
利用者名(日本語) :燒山佑美
Username (English) :Y. Yakiyama
所属名(日本語) :大阪大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Engineering, Osaka University

1.概要(Summary )
 本研究では「ねじれX型」の分子構造を有するインダンジオン二量体に着目し、その4-ピリジル基導入体について、これまでに弱い分子間相互作用からなる細孔性-非細孔構造間での「構造の可逆性」を有する柔軟な結晶性細孔構造を与えることを見いだしている。また、インダンジオン二量体は加熱・冷却により可逆な結合開裂・再結合を示すC-C結合を有している。これを利用した物性発現へとつなげるため、固体状態における結合開裂-再結合メカニズムについて更なる知見を得るべく、高温条件でのESR測定を行った。

2.実験(Experimental)
測定にあたっては、500 K までの昇温が可能なBruker製EMX Plusを利用した。5 mm管に加熱前の非細孔結晶を脱気封かんしたものをサンプルとし、室温で測定後、418 Kに昇温し、そこから20 Kずつ499 K まで昇温後、2時間かけて安定化させた。なお、固体サンプルであることから、加熱による結合開裂は結晶中において一様に生じない可能性があるため、各温度でESR強度に変化が生じなくなるまで10分に1回の頻度で3回ずつ測定を行った。その後は冷却過程としてESR強度を確認しながら20 Kずつ温度を下げて室温まで戻した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 室温から478 KまではESR強度の変化はほとんど見られなかったが、499 Kに昇温後、急激なシグナルの増強が観測された (図1)。また、温度低下後はg値の異なる別のシグナルが観測された。

測定後のサンプルは黒く変色し、また試料管内部に白色の単結晶が析出していた。このサンプルを持ち帰り、白色結晶について単結晶X線結晶構造解析より構造を確認したところ、フタル酸無水物であることが分かった。減圧状態で加熱されたことにより、サンプルの分解・昇華が生じたと考えられる。実験で観測された強いESRシグナルは分解過程に生じた化合物によるものと推測され、少なくとも2種類の開殻種が生成したことを示している。今後は減圧状態ではなく、窒素置換させた状態でサンプルを準備し、測定を行うことを予定している。

4.その他・特記事項(Others)
 本実験の遂行にあたり、分子科学研究所 機器センターの藤原基靖 博士、伊木志成子 氏より数多くのご助言を頂きました。この場を借りてお礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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