利用報告書

閾値光電子磁気円二色性を用いたチタン酸化物の表面・界面強磁性に関する研究
谷内敏之1)、両角海里1)、元結啓仁1)、辛埴1)
1) 東京大学物性研究所

課題番号 :S-15-MS-0035
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :閾値光電子磁気円二色性を用いたチタン酸化物の表面・界面強磁性に関する研究
Program Title (English) :Threshold photoemission magnetic circular dichroism study on surface and
interface of titanium oxides
利用者名(日本語) :谷内敏之1)、両角海里1)、元結啓仁1)、辛埴1)
Username (English) :T. Taniuchi1), K. Morozumi1), Y. Motoyui1), S. Shin1)
所属名(日本語) :1) 東京大学物性研究所
Affiliation (English) :1) The institute for solid state physics, The university of Tokyo

1.概要(Summary )
閾値光電子の磁気円二色性(TP-MCD)測定によって、ぺロブスカイト型チタン酸化物における表面および界面の強磁性の直接観測を試みた。我々は最近、光電子顕微鏡を用いて、チタニア界面・表面において室温強磁性を発見した。またこれらの2次元系の磁性は垂直磁気異方性を有している可能性が示唆された。しかしその詳細な磁気特性については、磁性層が試料全体に対してごくわずかであるため極めて高感度な測定手法が求められる。したがって SQUIDのような一般的な磁化測定手法では検出が非常に難しい。そこで本研究では分子研にて開発された紫外励起MCD測定法を用いて、表面および界面に現れた磁性キャリアを選択的に励起することで高感度な測定を行い、これらの磁気特性が測定可能性を検討した。
2.実験(Experimental)
実験には横山研究室に設置のTP-MCD測定装置を用いた。測定試料はパルスレーザー堆積法で作成したLaAlO3/SrTiO3薄膜、および超高真空で熱処理したSrTiO3 (001)単結晶を用いた。測定は面直入射でP-MCD測定を行い、これらの試料の磁気ヒステリシスの測定を試みた。測定は室温で、測定光源は波長266nmの円偏光パルスレーザーを用いた。磁場は±500 Oeの範囲で印加した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1にLaAlO3/SrTiO3薄膜、およびSrTiO3 (001)表面の測定結果を示す。今回、強磁性体が通常示すシステリシス曲線を明瞭に得るだけの十分な精度で測定することが出来なかった。我々の過去の光電子顕微鏡の実験では、通常MCDの大きさは0.1 %程度であるが、本研究では図1(a)のようにLaAlO3/SrTiO3薄膜の界面では最大磁場500 Oeでも0.1%程度の正味の磁化が見られなかった。また、SrTiO3(100)表面では全体のMCDシグナルがゼロ付近でなくオフセットが見られた。これは検出する光電子が印加磁場の影響を受けて真空中で曲げられてしまったことによる測定誤差を考えられる。今後、これら測定精度・感度を向上させることで、チタニア表面・界面にその磁気特性(磁気異方性・保磁力など)を明らかにしていく予定である。

図1 チタニア表面・界面における閾値光電子磁気円二色性(TP-MCD)測定。測定試料は(a) LaAlO3/SrTiO3ヘテロ界面および(b) SrTiO3表面。
4.その他・特記事項(Others)
担当教官の横山利彦先生、および横山研究室スタッフの皆様のご指導・サポートを頂き進めることが出来ました。また九州大学・中川剛志先生に技術的なご指導と共に実験準備にご協力頂きました。謹んで御礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし 
6.関連特許(Patent)
なし

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