利用報告書

電場応答スピン転移錯体の開発
中西 匠
九州大学 総合理工学府 物質理工学専攻

課題番号 :S-15-MS-1061
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :電場応答スピン転移錯体の開発
Program Title (English) :Developing new spin crossover complexes exhibiting electric field response.
利用者名(日本語) :中西 匠
Username (English) :Takumi Nakanishi
所属名(日本語) :九州大学 総合理工学府 物質理工学専攻
Affiliation (English) :Interdisciplinary Graduate School of Engineering Sciences, Department of
Molecular and Material Sciences, Kyushu University

1.概要(Summary )
電場応答性を示すスピン転移錯体の開発を行っている。その目的を達成するメカニズムとして、固体中の短い水素結合中におけるプロトン移動に着目している。我々は、分子間に短い水素結合を形成したスピンクロスオーバー錯体[Fe(L)2](H2FPh)(FPh = テトラフルオロフタル酸)を合成した(Fig 1)。本錯体は、100 Kから200 Kにかけて、2ステップのスピンクロスオーバーを示す。九州大学所有の装置での測定可能な最低温度が123 Kであるため、得られた錯体の、スピンクロスオーバー挙動と構造変化の関連を調べるために、本施設の単結晶X線回折測定装置を利用して100 K以下での構造の解析を行った。

Fig 1 [Fe(L)2]およびH2FPhの分子構造

2.実験(Experimental)
装置は、単結晶X線回折装置(微小結晶用) Rigaku MERCURY CCD-3を利用した。測定は90 Kで行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
測定の結果、スピンクロスオーバー前の低スピン状態での結晶構造情報を得る事ができた(Fig 2)。高スピン状態での結晶構造と同様に、錯体―FPh間でドナー/アクセプター間距離が2.515Åおよび2.636Åの二種類の短い水素結合を形成している事が確認された。また、配位子およびFPh中の結合長を高スピン状態と比
較したところ、プロトンの移動に由来すると期待される、結合長の変化が観測された。現在、温度変化IRスペクトルとの比較から、プロトン移動とスピンクロスオーバーの関連について考察している。

Fig 2 錯体-ジカルボン酸間で形成された水素結合

4.その他・特記事項(Others)
装置を利用する際には、装置管理者の岡野芳則 様から操作方法をご指導して頂きました。ありがとうございました。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

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