利用報告書
課題番号 :S-20-Nl-0013
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :電子エネルギー損失分光法によるCo酸化物の分析
Program Title (English) :Analysis of cobalt oxide by Electron energy-loss spectroscopy
利用者名(日本語) :吉田周平
Username (English) :S. Yoshida
所属名(日本語) :株式会社豊田自動織機
Affiliation (English) :Toyota Industries Corporation
検索キーワード :TEM、STEM、EELS、コバルト
1.概要(Summary)
球面収差補正走査透過電子顕微鏡を用い、Co酸化物の電子エネルギー損失スペクトル(EELS)を取得した。EELS形状にCoの酸化数や配位構造などの情報が反映されていることを確認した。
2.実験(Experimental)
利用装置:球面収差補正走査透過電子顕微鏡
グリットメッシュにCoO、Co3O4の粉体を載せたサンプルを作製し、上記の装置を用い分析を行った。エネルギーフィルターにはGIF Quantumを使用し、400eV~910eVのEELSを取得した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig. 1にCo-L端のEELSを示す。それぞれのサンプルでL2、L3スペクトルが検出された。Co3O4の方がL2、L3スペクトルの損失エネルギーが大きいことを確認できる。これはCo3O4がCoOより酸化数が大きく、相対的に有効核電荷が大きいことにより内殻電子のエネルギーが安定化していることと対応する。
Fig. 2にO-K端のEELSを示す。Co3O4には533eV付近に高強度のpre-edgeピークが検出されたがCoOには検出されなかった。CoOにおいては、Coを中心としたOとの立体構造は正八面体型のみである一方、Co3O4は正四面体型を有しており、O-2p軌道とp-d混成軌道を形成するためpre-edgeピークを生じたと推察した。
これらの結果からEELSよりCo酸化物のCoの酸化数および配位構造の違いを確認した。以上より、未知のCo酸化物の化学結合状態分析にEELSが有効であることを確認した。
Fig. 2 O-K端のEELS |
Fig. 1 Co-L端のEELS |
4.その他・特記事項(Others)
本研究は、文部科学省委託事業ナノテクノロジープラットフォーム課題として、分子・物質合成プラットフォームの支援を受けて実施されました。機器利用にあたり、TEM操作のご指導およびご助言いただきました浅香准教授には深く感謝を申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし