利用報告書
課題番号 :S-15-NI-41
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :電池正極材料の電子顕微鏡観察
Program Title (English) : The observation of the positive-electrode materials by electron microscopy
利用者名(日本語) :田中 斉景1),
Username (English) :Naokage. Tanaka1),
所属名(日本語) :1) 三菱自動車工業株式会社,
Affiliation (English) :1)Mitsubishi Motors, Co., Ltd
1.概要(Summary )
Liイオン電池の出力やサイクル寿命特性の低下抑制のため、正極活物質の表面改質は非常に重要である。本実験では、次世代車載電池の主要な活物質と期待されるLiNi0.3Mn0.3Co0.3O2(以下NCM)に注目し、劣化前後での粒子表面近傍の結晶構造をTEMで観察した。劣化前のNCMでは粒子内部や表面においてR3(-)mの層状構造であったが劣化したNCM粒子は表面から5nm程度を境にNaCl型の岩塩構造が観察された。
2.実験(Experimental)
電池の容量維持率が100%、および60%まで劣化させたNCM/黒鉛系Liイオン電池を2.5Vまで放電した。これらの電池をAr雰囲気のグローブボックス中で解体し、取り出した正極をDMCで洗浄、乾燥させた後、スパチュラにて正極合材を採取した。 採取した正極合材はエポキシ系樹脂(GATAN G2)で埋包後イオンミリングにて薄片化し、TEM観察用試料を作製した。作製した試料をTEM(日本電子製JEM ARM200F)にて観察し、活物質粒子の表面近傍と粒子内部のSTEM像、高分解像、電子回折像ならびにEELSスペクトルを取得した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に劣化させたNCM粒子の表面近傍のSTEM_ADF像を示す。明るい輝点は遷移金属(Ni、Mn、Co)原子である。表面から5nmを境に、内部領域では遷移金属原子の輝点は層状に配列していたが、表面領域では非層状に変化していた。
図2に劣化した粒子の表面近傍と内部の極微小電子回折像を示す。劣化前のNCMの結晶構造は、R3(-)mの層状構造であるが、劣化粒子では、表面の劣化層にNaCl型の岩塩構造が形成され、表面から5nmより内部の領域では劣化前と同じR3(-)mの層状構造であることがわかった。
今回測定した劣化NCM粒子では、表面を覆うように薄い劣化層が形成され、充放電によるLiイオンの移動を阻害していると推測される。
4.その他・特記事項(Others)
本実験はナノテクプラットフォーム「原子分解能分析電子顕微鏡」を利用。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







