利用報告書
課題番号 :S-18-NM-0001
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :顕微ラマン分光法による木材表層の気象劣化挙動の解析
Program Title (English) :Analysis of weathered wood surfaces by Raman microscopy
利用者名(日本語) :神林 徹
Username (English) :T. Kanbayashi
所属名(日本語) :(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
Affiliation (English) :Forest Research and Management Organization
1.概要(Summary)
木材を公共建築物や商業ビルなどのエクステリア資材として利用する機会が増える中、太陽光や雨などによる木材の気象劣化が問題となっている。木材を気象劣化因子から保護するには表層に何らかの耐候化処理を施す必要があるが、耐候化処理の効率化を図る際に重要となる木材の気象劣化メカニズムについては未解明な点が多く残されている。本研究では、促進耐候性試験における木材表層部の劣化挙動を細胞レベルで明らかにするため、顕微ラマン分光法を用いた局所化学分析を行った。その結果、促進耐候性試験により表層付近の細胞壁における細胞間層・セルコーナーおよび二次壁の内腔側で、リグニンの濃度が顕著に減少することが明らかとなった。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
【実験方法】
木材試験片(140 mm(L)×25 mm(R)×9 mm(T))を切り出して自然乾燥した後、表面(照射面)をプレーナーで平滑にし、キセノンウェザーメーターを用いて促進耐候性試験を行った。その後、試験片から小片(10 mm(L)×5 mm(R)×5 mm(T))を切り出し、ミクロトームを用いて表層部(照射面)を含む厚さ15 µmの薄切片を作製した。これを高速レーザーラマン顕微鏡により、スポット径が約0.6 µmの条件で分析を行った。
3.結果と考察 (Results and Discussion)
促進耐候性試験前後における木材表層付近から取得したリグニンおよび多糖のラマンイメージをFig. 1に示す。多糖の濃度は試験前後で大きな変化は見られなかった。一方、リグニンの濃度は表層付近の細胞間層・セルコーナーおよび二次壁の内側で顕著な減少が見られた。以上の結果から、木材の気象劣化は暴露表面側からだけでなく、細胞壁の内腔側からも進行することが明らかとなった。
4.その他・特記事項(Others)
ラマン顕微鏡の使用方法について詳細に教えていただきました服部晋也博士に深く感謝を申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
神林徹, 石川敦子, 松永正弘, 小林正彦, 片岡厚, 第69回日本木材学会大会, 平成31年3月15日.
6.関連特許(Patent)
なし。