利用報告書
課題番号 :S-17-JI-0024
利用形態 :技術代行支援
利用課題名(日本語) :食品成分の網羅的検出とその応用
Program Title (English) :Food analysis by mass spectrometry
利用者名(日本語) :平 修
Username (English) :S. Taira
所属名(日本語) :1) 福井県立大学・生物資源学部
Affiliation (English) :1) Fukui Prefectural University, Department of Bioscience
1.概要(Summary )
生体内のタンパク質などが変化すると、形態変化、疾患、薬剤耐性など様々な現象を引き起こす原因となりうる。通常、どのタンパク質が、どのくらい変化したかを解析する際には、変化前後のサンプルをそれぞれ質量分析(MS)などにかけて比較解析する必要がある。これは、煩雑であり、なにより微妙な差を読み落とす可能性がある。近年は、安定同位体を用いて質量差を付与することで、一度の測定で正確に解析を行うことが可能になっている。しかし、感度、簡便さには課題が残っていた。
今回、安定同位体を簡便に標識できるPy-Tagの基本性能(優位性)を、2つの実験を行い評価した。Py-Tagは、一級アミンでも炭素鎖が2つ以上ないと反応しない特徴をもっていることから、リジンに特異的に反応し、リジン残基1カ所につき質量差6または12を付与する。他のアミノ酸のアミノ基には反応しない。 (1)各種アミノ酸 とPy-Tagを反応させ、前述のように数種のアミノ酸に特異的に反応するか実証した。(2)合成ペプチドを用い、リジンが複数含まれている場合、リジンが隣接した配列である場合もラベル化が可能であることを確認した。
最終的に、多検体に含まれるタンパク質の変化を質量差でもって解析を試み、Py-Tagの有用性を実証することを卒業研究の目的とした。
2.実験(Experimental)
(1)タウリン、リジン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アスパラギンにPy0,6,12を加えラベル化を行った。
(2)サブスタンスP、マストパラン、α-ネオエンドルフィン、ソマトスタチンを(1)と同様の手順で各種Py-Tagでラベル化した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
炭素鎖を2つ以上持つアミノ酸のみPy-Tagによるラベル化が成功し、Py-Tagの特性が実証できた。リジンを含む合成ペプチドへのPyラベル化が確認できた。
シグナルの強度差による定量的な比較解析が期待でき、条件の異なるサンプル群を混合し一度の測定で、定量的に、タンパク質の変化を簡便に解析可能であることを示した。
4.その他・特記事項(Others)
支援員:大坂一生先生
宮里明夫先生
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
S.Taira et al., Food Chemistry 245, 1218-1233 (2018)
S.Taira et al., Scientific Reports 7, Article number: 12990 (2017)