利用報告書

高プロトン伝導性高分子層状組織体のin-situ湿度制御斜入射X線散乱測定
松井 淳
山形大学理学部

課題番号 :S-16-NU-0039
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :高プロトン伝導性高分子層状組織体のin-situ湿度制御斜入射X線散乱測定
Program Title (English) :In-situ Humid Controlled GI-SAXS Measurement For Highly Proton Conductive Polymer Organized Layered Films.
利用者名(日本語) :松井 淳
Username (English) :J. Matsui
所属名(日本語) :山形大学理学部
Affiliation (English) :Faculty of Science, Yamagata University

1.概要(Summary )
我々は、poly(dodecyl acrylamide) (PDDA)を積層構造骨格とした電気化学的発色性やプロトン伝導性を発現する高分子材料を提案している。最近、PDDAのスピンコート膜を加湿下および水中にて加熱処理を行うと、基板面外方向のX線散乱強度の増加と高次の散乱ピークが出現し、構造規則性が向上することがわかった。本支援では、加湿下のPDDA液晶性を確認するため、高湿度下のバルク状態によるin-situ X線散乱測定を行った。

2.実験(Experimental)
PDDAと水に浸した脱脂綿をマークチューブに封入し、加熱下のX線散乱測定を行った。X線散装置は、Rigaku FR-E/R-AXISを用いた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
Figure 1aに乾燥下および高湿度下の散乱像を示す(30 °C)。乾燥下では、ラメラ構造に帰属されるd = 2.8 nmの1次散乱ピークのみ観察された。一方、高湿度下では、1次散乱ピークが小角側にシフトし、2θ = 2.8° (d = 3.2 nm)とない、また、付随して2次および3次の散乱ピークが観察さていることがわかる。また、高湿度下にて60°Cに加熱をすると、ラメラ構造由来の散乱ピークは、強度が増し、半値幅も狭くなった(Figure 1b left)。これらの結果は、高湿度下にて、PDDAの形成するラメラ構造の長距離秩序が増加しており、高湿度下にて分子の秩序性が増す一種のライオトロピック液晶性を示すことが明らかとなった。80°Cの加熱では、高次の散乱ピークは消失し、長距離秩序性が低下することもがわかる。
PDDA薄膜において、加湿下または水中にて60°Cの加熱処理を行うと、ラメラ構造が基板と平行に高度に再配向した規則構造を示すことを見いだしている。この要因として、本研究にて観察された、加湿下のライオトロピック液晶性が大きく関与しているものと考察できる。

Figure 1. XRD patterns for PDDA powder in dry (a, left) and high humid state at 30oC (a, right), 60oC (b, left) and at 80oC (b, right).

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 橋本 侑宜, 佐藤 琢磨, 永野 修作, 長尾 祐樹, 山本 俊介, 三ツ石 方也, 松井 淳, 水が誘起する poly(N-dodecyl acrylamide)の均一ラメラ構造形成, 第65回高分子学会年次大会
(2) Y Hashimoto, T Sato, R Goto, Y Nagao, M Mitsuishi, S Nagano, J Matsui, “In-plane oriented highly ordered lamellar structure formation of poly (N-dodecylacrylamide) induced by humid annealing”, RSC Adv. Vol. 7 (2017), pp. 6631-6635.

6.関連特許(Patent)
なし

©2025 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.