利用報告書

高分子による材料機能化手法に立脚した生体-材料界面の精密設計および メカノ・ケミグラジエントゲルの創製
西島菜々美
富山大学大学院理工学教育部

課題番号 :S-18-NM-0054
利用形態 :技術補助
利用課題名(日本語) :高分子による材料機能化手法に立脚した生体-材料界面の精密設計および
                   メカノ・ケミグラジエントゲルの創製
Program Title (English) :Design of biomaterial interface using specific function of polymers and construction of mechano- and chemi-gradient gel for cartilage regeneration
利用者名(日本語) :西島菜々美
Username (English) :N. Nishijima)
所属名(日本語) :富山大学大学院理工学教育部
Affiliation (English) :Graduate School of Science and Engineering, University of Toyama

1.概要 (Summary)
 細胞制御には、材料の化学的組成と物理的組成の最適化が不可欠であることはよく知られているが、その両方を系統的に理解するまでには至っていない。そこで本研究では、化学的組成と物理的組成が明確な材料表面を構築し、その表面特性評価や生物学的評価から得られる知見を踏まえ、最適な細胞-材料複合体の設計指針について明確化することを目指す。そして、生体内の傾斜階層構造の組織体の模倣を最終目標として、傾斜階層組織体を誘導できるメカノ・ケミグラジエントゲルの創製を目指す。
2.実験 (Experimental)
【利用した主な装置】
LC-MS (LXQ),Circular Dichroism (CD),Clean bench
【実験方法】
 細胞表面抗原の一つである CD44 に対して特異的に結合するペプチド (CD44BP) を固相合成により得て,その末端にアクリロイル基を導入することにより, ペプチドモノマー (CD44BP-Am) を作製した。CD44BP-Amは,LC-MS および CD スペクトル測定により,純度・二次構造を評価した。CD44BP-Am, N (2-hydroxypropyl)acrylamide (HPA) および N-benzo phenoneacrylamide (BPA) からなる三元共重合体をフリーラジカル重合により合成し,ポリマー側鎖の CD44BP-Amの二次構造を評価した。この三元共重合体を,光架橋によりガラス基板上でゲル化させシートを作製し,細胞選択接着性を評価した。
3.結果と考察 (Results and Discussion)
CD測定より,CD44BP-Amは基本的にランダムコイル構造であるが,一部で分子間の水素結合形成により βストランド・ βシート構造を形成している可能性が示唆された。三元共重合体の CD スペクトルは,CD44BP-Amとほぼ同様であったことから,ポリマー側鎖の CD44BP は、遊離状態と土曜の二次構造を有すると考えられる (Fig. 1)。
CD44BP含有共重合体を被覆した基板への細胞接着を評価した結果,L929 および HepG2 細胞は接着しなかったが,hMSC は接着することが分かった。この結果より, 共重合体に含まれるHPA の特性により細胞の非特異接着を抑制でき, CD44抗原を有する hMSC のみを選択的に捕捉・接着させることができることが明らかとなった。しかしながら,細胞捕捉数が非常に少なかったため,今後ポリマー中のペプチド含有量の最適化を行う必要があることもわかった。

4.その他・特記事項(Others)
NIMS服部晋也博士に装置利用について支援を受けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

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