利用報告書

高分子ハイブリッドナノ材料の電子物性評価
山本 俊介
東北大学多元物質科学研究所

課題番号                            :S-17-TU-0003

形態                                   :機器利用

利用課題名(日本語)          :高分子ハイブリッドナノ材料の電子物性評価

Program Title (English)   :Electronic Structure Analysis of Polymer Hybrid Materials

利用者名(日本語)     :山本 俊介

Username (English)         :S. Yamamoto

所属名(日本語)                 :東北大学多元物質科学研究所

Affiliation (English)         :IMRAM, Tohoku Univ.

検索キーワード                 :金ナノクラスター、近赤外発光、高分子修飾

 

1.概要(Summary

Au原子数個~200個で構成される金ナノクラスター(AuNC)はバルクや単原子では見られない物性を示すことが知られている。特に発光は発光波長が粒子の大きさの変化に追随して変化するため注目を集めているものの、主として溶液中での検討が行われてきた。本研究では水溶性のAuNCを作製し、種々の水溶性高分子への分散性と発光特性を検討した。

2.実験(Experimental

【利用した主な装置】

大気中光電子分光測定装置(PYS)

絶対発光収率評価装置

【実験方法】

配位子となるα-lipoic acid (LA)とHAuCl4の混合溶液をpH = 10に調整し1晩攪拌した。この溶液に還元剤としてNaBH4水溶液を加え、激しく撹拌した。1時間静置した後、得られた溶液の遠心限外濾過によって精製を行いLA修飾AuNC(AuNC@LA)を得た。TEMおよびMALDI-ToF-MSスペクトル、UV-vis吸収スペクトル、PLスペクトル測定により作製した粒子の形態観察および物性測定を行った。また、AuNC@LA分散高分子膜は水溶性高分子polyvinylalcohol (PVA)もしくはpolyethylene glycol (PEG)とAuNC@LAの混合溶液からキャスト法によって作製した。

 

3.結果と考察(Results and Discussion

AuNC@LAを高解像度TEMで観察し、粒径を求めたところ、1.4~1.6 nmであった。また、MALDI-ToF-MSスペクトルより粒子の分子量および構成原子を調べたところ、Au22S16を中心に分布していることが分かり、AuNC@LAが生成したことが確認できた。PLスペクトル測定より、溶液は波長720 nm, 810 nmにピークとして赤~近赤外領域でブロードな発光を示すことが分かった(図1)。次に高分子薄膜への分散性を検討するため、キャスト膜を作製したところ、いずれも均一な膜が得られた。得られたキャスト膜のPLスペクトルを測定した結果、PVA中では発光ピークは650 nmで短波長シフトと発光量子収率の増加が見られた一方、PEG中では発光波長シフトや発光量子収率の変化は見られなかった。以上のことから高分子薄膜内にAuNC@LAを分散させることで発光挙動が変化することが分かった。

 

4.その他・特記事項(Others

なし

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation

(1) M. Hashimoto, T. Nagasawa, S. Yamamoto, M. Mitsuishi, Tohoku University’s Chemistry Summer School 2017, 2017年8月21日(発表日).

(2) 橋本舞, 永澤匠, 山本俊介, 三ツ石方也, 第66回高分子学会年次大会, 2017年5月30日(発表日).

 

6.関連特許(Patent

なし

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