利用報告書

高感度ウイルスナノセンサの開発
田中裕行
大阪大学産業科学研究所

課題番号 :S-16-OS-0009
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :高感度ウイルスナノセンサの開発
Program Title (English) :Nanosensor fabrications for single-virus detections
利用者名(日本語) :田中裕行
Username (English) :H. Tanaka
所属名(日本語) :大阪大学産業科学研究所
Affiliation (English) :ISIR, Osaka University

1.概要(Summary)
固体ナノポア(ナノポアはナノサイズの細孔)はDNAやたんぱく質の1分子分析を可能にする新しいセンシングデバイスとして広くその研究開発が行われている。一方、当研究グループでは、ポアの深さが直径に比して極めて浅く作られた超低アスペクト比ナノポアを応用することで、ウイルスの大きさ、形状や表面電荷量の違いを単一粒子レベルで識別可能な高感度ウイルス検出法の研究を行っている。本課題では、窒化膜付きSiウエハ上に厚さ 50 nmのSi3N4メンブレンを作製し、そのメンブレン中に直径300 nmの細孔を空けたナノポアデバイスの作製を実施した。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
リアクティブイオンエッチング装置、ICP-RFスパッタ装置
【実験方法】
両面Si3N4膜付きSiウエハの一方の表面上にマスクアライナーを用いてSi基板上に外部マーカーを描画した。その後、高周波マグネトロンスパッタ法によりAu/Cr層を蒸着させ、リフトオフプロセスを経てAu外部マーカーを得た。次に、当該外部マーカーを用い電子線描画法によりメンブレン上に直径300 nmのポアをパターニングした(レジスト:ZEP520A-7)。そして、CF4ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)により直径300 nmの細孔を掘削した。続いて、基板裏面中央のSi3N4層を部分的にRIEプロセスにより除去したうえで、KOHによるウェットエッチングによりウエハの一方からSi層を除去していくことで、基板の表面に厚さ 50 nmのSi3N4メンブレンを形成させた。このとき、外部マーカーを用いてメンブレン中にポアが空くよう位置あわせを行った。以上のプロセスを経て、直径300 nm深さ50 nmの超低アスペクト比ポアの作製に成功した(Fig. 1)。

3.結果と考察(Results and Discussion)
作製した超低アスペクト比ポアの上下に微小流路付きPDMSブロックを貼り付け、流路内をバッファ溶液で満たした状態で1対の銀/塩化銀電極を用いてポアを通るイオン電流を測定した。その結果、ポアの一方にインフルエンザウイルスを含んだ溶液を導入した場合において、パルス状の電流シグナルが検出された。これはポアを1個の負電荷を帯びたインフルエンザウイルスがポア近傍に集中する電場の影響を受けて電気泳動的に通過する際に、ポア内を移動するイオンの輸送を阻害したことによる電流の過渡的な減少であると解釈できる。これにより、作製した超低アスペクト比ポアがウイルスサイズの微粒子を単一粒子レベルで検出可能なセンサとして応用できることを確認することができた。

Fig. 1. SEM image of a 300 nm-sized nanopore.

4.その他・特記事項(Others)
・関連する課題番号:F-16-OS-0011
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

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