利用報告書

高結晶性ナノカーボン薄膜トランジスタによるバイオセンサー開発
根岸 良太,大畑 惇貴,新美 律,中村 圭介,岡田 格明,小林 慶裕
大阪大学大学院,工学研究科,精密科学・応用物理学専攻

課題番号 :S-17-OS-0010
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :高結晶性ナノカーボン薄膜トランジスタによるバイオセンサー開発
Program Title (English) :Development of biosensor using highly crystalline nanocarbon thin film transistor
利用者名(日本語) :根岸 良太,大畑 惇貴,新美 律,中村 圭介,岡田 格明,小林 慶裕
Username (English) :R. Negishi, A. Ohata, R. Niimi, K. Nakamura, K. Okada, Y. Kobayashi
所属名(日本語) :大阪大学大学院,工学研究科,精密科学・応用物理学専攻
Affiliation (English) :Dep. of Applied Physics, Graduate School of Engginiering, Osaka University
キーワード/Keyword    :グラフェン、観察、走査型電子顕微鏡(SU9000)

1.概要(Summary)
優れた電子特性を有するグラフェンの電子デバイスへの応用が注目されている。 しかしながら、グラフェンは単原子層構造であるがゆえに、デバイス基板や不純物電荷などの周囲の環境に大きく影響を受けるため、デバイス応用においてグラフェン本来の性能を引き出すことは困難である。乱層構造を持つ多層グラフェンは、多層でありながら層間相互作用が弱いため、擬似的に単原子層の電子構造を有することが理論的に指摘されている。このような多層構造では、レイヤー間のスクリーニング効果により周囲の環境による影響が少なく、グラフェン本来の特性を活用したデバイスへの応用が期待できる。我々は、高結晶性乱層型多層グラフェンの合成に向けて、1000℃以上の超高温プロセスを検討した。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
S14走査型電子顕微鏡(SU9000 日立ハイテクノロジーズ)

【実験方法】
単層グラフェンをクオーツ基板上へ転写し、これをテンプレートとして、その上に新たなグラフェンの合成を試みた。グラフェンの成長は、光加熱炉により処理温度1300℃、成長ガスとしてエタノールを用いた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に、成長前・後のグラフェンに対する走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。成長前のグラフェンは濃い灰色の領域に対応しており、平均的なグラフェンフレークサイズが~10μm程度であることが分かる。また、転写プロセスによりリンクル構造がフレーク表面に形成されている。成長後、グラフェンのコントラストが薄い灰色に変化しており、成長により層数が増加していることが明らかとなった。一方で、クオーツ基板表面にも突起物のような構造が観察され、エタノールガスの供給により基板表面にアモルファスライクな炭素が堆積しているものと考えられる。以上の結果から、グラフェンを固体テンプレートとした結晶成長によりグラフェンの多層化が可能であることが明らかになった。今後は、多層化したグラフェンの結晶性や積層構造を明らかにする必要がある。

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 根岸 良太 “単層・多層グラフェン薄膜の合成と物性-エレクトロニクス応用に向けて-”新学術領域研究 若手研究会(情報通信研究機構 2018年1月5-6日)招待講演
(2) 根岸 良太 “単層から多層グラフェン薄膜の科学-合成とその物性-”ナノカーボンワークショップ (東京理科大学 2017年8月31日)招待講演

6.関連特許(Patent)
なし

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