利用報告書
課題番号 :S-20-NI-0002
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :新規ナノ材料の合成と評価
Program Title (English) :Preparation and characterization of novel nanomaterials
利用者名(日本語) :本田光裕
Username (English) :Mitsuhiro Honda
所属名(日本語) :名古屋工業大学
Affiliation (English) :Nagoya Institute of Technology
1.概要(Summary )
二種類の半導体を結合して複合体化すると、界面電荷移動が光励起電子−正孔対の再結合を遅らせるこことができ、電荷分離効率が向上とともに光触媒作用が飛躍的に増強される。ZnOとZnSは何れも地球に豊富な元素のみを含む直接遷移型ワイドギャップ半導体として知られ、その複合体形成と応用の研究が盛んに行われており、多様なサイズや形状のZnO-ZnSナノ複合体が報告されている。一般的に、複合体形成方法として高温や真空環境を要し、複合体形成過程において、意図しない欠陥や不純物が結晶構造に導入されるリスクが生じる。本研究では、室温条件下にてZnO-ZnSなの複合体を形成する手法を提案し、複合体の光触媒効果の評価を行った。
2.実験(Experimental)
【利用した装置】
特型走査電子顕微鏡装置 JEOL-JSM5600+特型試料ステー ジ
精密形状測定・局所磁気測定・局所電気特性評価装置 日本電子(JEOL)、JSPM-5200TM
【実験方法】
マグネトロンスパッタにより成膜したZnO薄膜上に、コロイド沈殿法で作製したZnSナノ粒子をスピンコート(2000 rpm 20 sの後、4000 rpm 20 s)し、複合体を形成した。スピンコートの回数を変化させてナノ粒子コーティング層の厚みと被覆率を制御し、複合体の構造が光触媒効果に与える影響を検討した。コーティング層の厚みと被覆率をそれぞれ走査型電子顕微鏡と精密形状測定により測定した。光触媒効果は、複合体表面に塗布したメチレンブルーの退色反応速度にて評価を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1は、異なるスピンコート回数(1〜20 回)でZnO薄膜上にスピンコートされたZnSナノ粒子のSEM画像である。被覆率は、スピンコート1回で13%であり、20回行うと95%に増加することが確認された。図2に、光照射によるZnO-ZnS複合体上のメチレンブルーの濃度の変化を示す。なお、赤色は、1000℃アニール処理したZnO薄膜を使用した際の結果である。複合体は、ZnO及びZnS単体と比較して高い光触媒効果を有することが確認された。また、被覆率の変化に伴って、光触媒活性の違いが見られた。ZnSナノ粒子の被覆率が増加すると共に反応速度が増加し、被覆率が72%の時、最も高い反応速度を示すことが分かった。ZnS層の厚みは数ミクロンあることが形状測定により分かっており、照射光の侵入深さ(325 nmレーザーがZnSに対する侵入深さ:70 nm)を考慮するとZnSアイランドの中央部は光触媒反応に寄与しないと考えられる。他にも光触媒作用に影響するパラメータは複数有るが、最も相関があったパラメータは、ZnOとZnSの境界長であった。ZnOとZnSの境界近傍において、電子-正孔対が光励起され電荷分離が生じ、電子と正孔がそれぞれエチレンブルーの分解反応に寄与した説明できる。
図1 異なる塗布回数で作製したZnO-ZnS複合体のSEM像、(a-d)は、それぞれ1、5、10、20回を示す。(e)は、(d)において赤四角で囲った箇所の拡大像である。
図2 ZnO薄膜(TF)、ZnSナノ粒子、複合体による光触媒反応。
4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は、JSPS科研費 18K14147の助成を受けたものである。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Zhang Qiyan, Mitsuhiro Honda, Yo Ichikawa
“Fabrication of ZnS/ZnO composite photocatalysts by spin-coating ZnS nanoparticles on ZnO thin film”
Japanese Journal of Applied Physics, 60, 036504 (2021)
6.関連特許(Patent)
なし。