利用報告書

1,3-bis[bis(pyridin-2-ylmethyl)amino]propan-2-ol)を配位子とする金属錯体の開発と評価
浅川大樹
国立研究開発法人 産業技術総合研究所

課題番号 :S-16-JI-0003
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :1,3-bis[bis(pyridin-2-ylmethyl)amino]propan-2-ol)を配位子とする金属錯体の開発と評価
Program Title (English) :Development of metal complex with 1,3-bis[bis(pyridin-2-ylmethyl)amino]propan-2-ol)
利用者名(日本語) :浅川大樹
Username (English) :D. Asakawa
所属名(日本語) :国立研究開発法人 産業技術総合研究所
Affiliation (English) :National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)

1.概要(Summary )
一般的に、タンパク質の同定は質量分析法による分析結果をデータベースと照合することで行われるが、未知の翻訳後修飾を含むタンパク質の同定には対応できないことが多い。従って、データベースを用いずマススペクトルから直接タンパク質のアミノ酸配列を決定するデノボシークエンシングによるタンパク同定も重要である。正確なタンパク質アミノ酸配列同定には、タンパク質を規則的に分解する手法が必要であり、これはタンパク質イオンのラジカル化反応により実現されている。タンパク質のラジカル化に伴うフラグメンテーションとして最も広く用いられている手法は電子移動解離法(ETD)である。ETDはタンパク質の多価イオンとラジカルアニオンの再結合反応により、目的のタンパク質をラジカル化させ、タンパク質主鎖のN–Cα結合の選択的フラグメンテーションを誘起する手法である。ETDはペプチド・タンパク質のアミノ酸配列に有用な手法であるが、分解効率が低いことが欠点である。本研究ではリン酸化ペプチドの分解効率の向上のために金属錯体を用いる手法について検討を行った。
2.実験(Experimental)
1,3-bis[bis(pyridin-2-ylmethyl)amino]propan-2-ol) (以後”L”と表記する)は2-Pyridinecarboxaldehydeと1,3-Diamino-2-propanolから合成した。金属としては銅、亜鉛、ガリウムを用いた。リン酸化ペプチドと金属錯体複合体のETD質量分析はBruker社SolariX FTを用いた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
リン酸化ペプチド試料と金属錯体を混合し、エレクトロスプレーイオン化質量分析法で分析を行ったところ、複合体の形成を確認した。錯体としては銅、亜鉛、ガリウムを金属中心とするものを用いたが、亜鉛錯体(Zn2L)を用いたときにリン酸化ペプチドのシークエンシングに有用な結果が得られたので、これについて記述する。Figure 1にZn2Lとリン酸化ペプチド、VNQIGpTLSESIKのETDマススペクトルを示す。この結果から、本手法によりリン酸化ペプチドのリン酸化サイトを含めたアミノ酸配列解析が可能であることがわかる。一方、比較として[M+2H]2+を用いてETD-MS2測定を行ったが、リン酸化ペプチドのアミノ酸配列を決定することはできなかった。従って本研究で用いた錯体Zn2Lを添加することにより、これまで分析の難しかったリン酸化ペプチドのアミノ酸配列解析が行えるようになった。
4.その他・特記事項(Others)
本研究は大坂一生先生の支援を受けて行いましたので、共著として論文発表を行いました。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) D. Asakawa, I. Osaka, Anal. Chem., Vol. 88(2016)p.p. 12393−12402.
6.関連特許(Patent)
なし。

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