利用報告書
課題番号 :S-17-TU-0014(NPJ試行的利用受付番号:NPS17035)
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :強磁場NMRを利用した有機ゲルマニウム化合物-核酸錯体形成の観測
Program title (English) :High magnetic field NMR measurements of complex between organogermanium compound and nucleic acids
利用者名(日本語) :島田康弘
Username (English) :Yasuhiro Shimada
所属名(日本語) :株式会社浅井ゲルマニウム研究所
Affiliation (English) :Asai Germanium Institute Co., Ltd.
検索キーワード :有機ゲルマニウム化合物、Ge-132、RNA、錯体、NMR
1.概要(Summary)
Poly-trans-[(2-carboxyethyl)germasesquioxane] (Ge-132)は健康食品および化粧品の機能性素材として流通している有機ゲルマニウム化合物である。Ge-132の水解物である3-(trihydroxygermyl)propanoic acid (THGP)は、中性条件下において、シスジオール構造を持つ化合物と可逆的に錯形成する。例えば、核酸構成物質(ヌクレオチド、ヌクレオシド)と、構造中のシスジオール部位を介して錯形成することが核磁気共鳴(NMR)分光法により確認されている。そこで、これらのポリマーであるリボ核酸(RNA)とTHGPとの錯形成能の評価を試みた。しかしながら、低磁場NMRでは分解能および感度が低いため、検討することが困難であった。そこで本実験では、強磁場NMRによる測定を行い、THGP-RNA間の錯形成能を検討した。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
1H NMR測定にはJEOL RESONANCE製ECA 800 (18.8 T)を用いて、室温で行われた。液体1H NMR測定における化学シフトの標準には、重水溶媒中の余剰のHOD (4.80 ppm)を内部標準に用いた。
【実験方法】
核酸はアデニンが15塩基連続しているRNA鎖を使用した。THGPの縮合物であるGe-132は株式会社浅井ゲルマニウム研究所で製造されたものを使用し、実験には水酸化ナトリウムで中和したものを使用した。RNAとTHGPの等モル水溶液を調製し、減圧濃縮装置にて乾固した。NMR測定は、まず得られた乾燥粉末の固体1H NMR測定を行った。次に、乾燥粉末を重水に溶解し、液体1H NMR測定を行った。RNAおよびTHGP単体についても同様にNMR測定を行った。
3.結果と考察(Results and discussion)
THGPの固体1H NMRを測定した結果、1箇所にブロードのピークが観測された。THGPの液体1H NMRスペクトルは通常、THGPが持つ2つの隣り合うメチレンに由来する3重線が2箇所に観測される。錯形成した場合、THGPピーク付近に、新たに錯体由来のピークが出現することが報告されている[1]。しかしながら、今回の固体NMRの分解能では新たに出現する錯体由来のピークを観測することは困難であることが示唆された。次に液体1H NMRを測定した。測定の結果、新たなピークは観測されず、錯形成を示す結果は得られなかった。しかしながら、THGP-RNA混合溶液におけるTHGP由来のピークにブロードニングが確認された(Fig. 1)。このことから、THGPとRNAとの間に相互作用が生じている可能性が示唆された。
4.その他・特記事項(Others)
【謝辞】
本研究は、文部科学省委託事業ナノテクノロジープラットフォーム課題として物質・材料研究機構微細構造解析プラットフォームの支援を受けて実施されたものであり、関係諸機関に感謝申し上げます。各種分析を行って頂きました東北大学權垠相准教授、門馬洋行先生、吉田慎一郎先生に深く感謝致します。
【参考文献】
[1] Y. Shimada, K. Sato, T. Takeda and Y. Tokuji, Biol. Trace Elem Res. 2018, 181, 164-172
5.論文・学会発表(Publications)
なし
6.関連特許(Patents)
なし