課題番号 ：S-17-SH-0009
利用形態 ：共同研究型支援
利用課題名（日本語） ：摩擦撹拌処理によるAl-CNT複合材の機械的特性の改善
Program Title (English) ：Improvement in Mechanical Properties of Al-CNT Composite by Friction Stir Processing
利用者名（日本語） ：尾和 智信
Username (English) ：Tomonobu Owa
所属名（日本語） ：長野県工科短期大学校 生産技術科
Affiliation (English) ：Dept of Production Engineering, Nagano Pref. Institute of Technology

１．概要（Summary）
Al-CNT複合材は，実用Al合金に比べ，引張強度や縦弾性係数が著しく向上するが，延性は大きく減少し実用上の課題となる。その原因は脆性炭化物Al3C4の形成と成長に起因していると考えられるが，これを阻止・抑制する手段として熱処理や通常の塑性加工では不十分である．そこで，強いせん断変形を導入し微細組織を形成することができる摩擦撹拌処理の効果が期待される．その有効性について実験・検証する．
２．実験（Experimental）
市販の5083Al合金の切りくずと昭和電工製VGCF (MWCNT) を所定量秤量して，SUS製ボールミル容器に混入し，三軸方向加振型ボールミル(BM)により混合・複合化処理し，5083Al-8mass%MWCNT複合粉末を作製した．これを金型に充填し，グローブボックス内で真空度200Pa以下，焼結温度550℃，加圧応力140MPa，1hr保持を行い，50×40×2 mmの真空加圧焼結試料（Al-CNT複合材）を得た．
5083母材に薄板を挟み込むスペースをエンドミルにより加工し，1.6mmの厚さにしたAl-CNT複合材を挟み込んで，母材とともに摩擦攪拌処理（FSP）し複合材料(摩擦攪拌部)を作製した．
３．結果と考察 (Results and Discussion）
焼結薄板を強化材として母材とともにFSPすることで，FSP条件の最適化に改善の余地はあるものの，Al合金中にMWCNTを混合分散することが可能であることが明らかとなった．作製した攪拌部組織は母材を超える引張強度を示した．延性の低下はAl-CNT複合材のみのFSP処理より延性が改善した．
Fig. 1に550℃焼結薄板を用いて作製した複合材料（摩擦攪拌部）のTEM観察像と対応する制限視野電子回折像を示す。明視野像(a)では複雑な形状に屈曲した100 nm以下のコントラストとそれらの周辺の数十nm程度の長さの針状コントラストが観察された．これらのコントラストは，素地中に100 nm以下の非常に微細な別の相が存在することを示唆した．FESEM観察などからFSPにより組織の微細化が，そしてTEM観察などにより複合材添加によるさらなる微細化および微細な炭化物相の存在が示された．

Fig.1 TEM micrographs and associated diffraction patterns through the FSP composite matrix showing precipitates: (a) bright field, (b) higher magnification of (a), (c) and (d) the corresponding SAED pattern.
４．その他・特記事項（Others）
信州大学カーボン科学研究所の清水保雄特任教授および共同研究者の貝梅正二氏には，研究結果の討議や評価手法について的確な指摘を頂いた．記して感謝する．
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) 尾和智信，清水保雄，貝梅正二：金属，Vol.88, No.1 (2018) pp.28-35.
６．関連特許（Patent）
なし