利用報告書

BEDT-TTF系有機導体の反強磁性ー超伝導転移と電荷グラス転移の精密交流磁 化率測定
岡野修樹, 谷口弘三
埼玉大学大学院理工学研究科

課題番号 :S-16-MS-1097
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :BEDT-TTF系有機導体の反強磁性ー超伝導転移と電荷グラス転移の精密交流磁
化率測定
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :岡野修樹, 谷口弘三
Username (English) :
所属名(日本語) :埼玉大学大学院理工学研究科
Affiliation (English) :

1. 概要(Summary )
擬二次元電子相関系のモデル物質であるBEDT
TTF塩の二つの系(ダイマー系と非ダイマー系)において、磁化測定により、物性を調査した。特に、ダイマー系のκ型物質では、弱磁場領域を精密に調査するために交流磁化率測定により調査した。結果として、この物質の超伝導転移温度直上に非線形な磁化率の振る舞いをしめす弱強磁性相が存在することが判明し、この物質の超伝導転移が傾角反強磁性―超伝導転移であることが濃厚となった。この結果は、これまでの研究で謎であった、超伝導転移にヒステレシスを伴うという現象の起源について重要な知見を与えるものであった。

2. 実験(Experimental)
機器センターのSQUID磁束系(MPMS-XL)を用いて、交流、直流磁化率を測定した。

3. 結果と考察(Results and Discussion)
今回得られた結果は、この物質の超伝導転移が傾角反強磁性―超伝導転移であることを示唆しており、通常の超伝導転移の二次転移ではなく、一次相転移であることを示唆している。これは、当研究室が発見した、超伝導転移におけるヒステレシス現象と一致するものである。
また、この現象を観測するためには、この試料を極めてゆっくりと冷やさなければならないことも判明した。これが、この現象がこれまで発見されていなかった理由であろう。急冷すると、系に乱れが導入されると考えられるが、今回の現象はこの乱れに極めて弱いもしくは観測しずらくなるということも判明した。さらに調査を進めるために、この物質中の原子を一部置換した試料でも測定する予定である。このような研究により、この系の反強磁性―超伝導転移の起源の理解につながることが期待される。

4. その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし(ただし、2017年の秋の物理学会で発表予定)

6.関連特許(Patent)
なし

©2025 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.