利用報告書
課題番号 :S-17-NI-0017
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :BiFe1−xMnxO3のスピン構造制御
Program Title (English):Spin structure manipulation in BiFe1−xMnxO3
利用者名(日本語) :重松 圭1)、浅倉武志1)、山本 孟1)、清水啓佑1)、
清水陽樹1)、勝俣真綸1)、北條 元2)、壬生 攻3)、東 正樹1)
Username (English) :Kei Shigematsu1), Takeshi Asakura1), Hajime Yamamoto1), Keisuke Shimizu2),
Haruki Shimizu1), Marin Katsumata1), Hajime Hojo2), Ko Mibu3), Masaki Azuma1)
所属名(日本語) :1) 東京工業大学フロンティア材料研究所, 2)九州大学総合理工学研究院物質科学 部門, 3) 名古屋工業大学工学研究科
Affiliation (English) :1)Laboratory for Materials and Structures, Tokyo Institute of Technology,2) Department of Energy and Material Sciences, Faculty of Engineering Sciences, Kyushu University, 3)Graduate School of Engineering, Nagoya Institute of Technology
1.概要(Summary)
FeサイトにMnを置換したBiFeO3について、粉末試料とエピタキシャル薄膜試料におけるメスバウアー分光を行いそのスピン構造を調べた。結果として、粉末・薄膜試料で両者ともコリニアスピン構造であるが、四重極分裂の値が示唆するスピンの方向と電場勾配の関係が異なることが明らかになった。
2.実験(Experimental)
高圧合成法によって合成したBiFe0.8Mn0.2O3粉末試料について、透過型メスバウアー分光測定を行った。また、パルスレーザー堆積法によってSrRuO3(10‒15 nm)/SrTiO3(001)基板上に膜厚80‒90 nmのBiFe0.9Mn0.1O3エピタキシャル薄膜を作製し、内部転換電子型メスバウアー分光(CEMS)を測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に、BiFe0.8Mn0.2O3粉末試料のメスバウアースペクトルを示す。BiFe0.8Mn0.2O3は室温におけるBiFe0.9Co0.1O3と同様に左右対称のスペクトルであることから、Mn置換によってコリニアスピン構造が安定化されることがわかった。しかし、BiFe0.8Mn0.2O3の四重極分裂QSは0.16 mm/sと正の値であり、BiFe0.9Co0.1O3とは逆符号[1]であった。この結果は、BiFe0.8Mn0.2O3においてはスピンが電場勾配に対し平行であることを示唆する。この場合Dzyaloshinskii-守谷相互作用によるスピンキャントは生じない。この結果は、磁化の磁場依存性において強磁性なヒステリシスが見られないことと合致する。
図2に、BiFe0.9Mn0.1O3薄膜におけるメスバウアースペクトルを示す。薄膜試料においても左右対称なスペクトル形状が得られ、コリニアスピン構造を有していることがわかった。しかし、四重極分裂は−0.06 mm/sと負の値であり、薄膜試料では内部電場とスピンの方向が垂直に近づいたことが示唆された。面内磁化の磁場依存性を測定したところ、飽和磁化~0.04 μB/f.u.程度の強磁性的なヒステリシスが観測された。加えて、メスバウアースペクトルの強度比から、BFMO薄膜にけるスピンは薄膜面内に平行である結果が得られた。これはSrTiO3基板からの引張り歪みによるものと示唆される。以上の結果は、Feサイトへの元素置換によるコリニアスピン構造の安定化と基板応力によるスピン方向の制御による、BiFeO3系薄膜材料の磁性制御の可能性を示唆する。
4.その他・特記事項(Others)
[1] H. Yamamoto, et al., J. Phys. Soc. Jpn. 85, 064704 (2016).
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Kei Shigematsu, Takeshi Asakura, Hajime Yamamoto, Keisuke Shimizu, Marin Katsumata, Haruki Shimizu, Yuki Sakai, Hajime Hojo, Ko Mibu, and Masaki Azuma, Appl. Phys. Lett. (2018) in press.
6.関連特許(Patent)
なし。