利用報告書
課題番号 :S-16-CT-0019
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :BTImPのESIPT型蛍光色素で観察されたフルカラー発光のメカニズムの解明
Program Title (English) :Elucidation of the mechanism of full color emission observed in the ESIPT
fluorophore of BTImP
利用者名(日本語) :土屋早紀1), 坂井賢一1), 中根由太2), 芥川智行2)
Username (English) :TSUCHIYA, Saki1); SAKAI, Ken-ichi1); NAKANE, Yuta2); AKUTAGAWA, Tomoyuki2)
所属名(日本語) :1)千歳科学技術大学, 2) 東北大学多元研
Affiliation (English) :1)CIST, 2)IMRAM, Tohoku Univ.
1.概要(Summary )
近年、単一色素からの多色蛍光発光が注目されている。溶媒の極性に依存して蛍光波長が広範囲に変化する蛍光ソルバトクロミズムや、励起波長を変化させることで赤(R)、緑(G)、青(B)だけでなく白をも含めた多色蛍光を実現した例は知られているが1)、外部からの刺激の種類や強度に応答して多彩な蛍光色を発する例はない。我々は最近、フェノールの2位と6位の炭素にベンゾチアゾール環(BT)とイミダゾール環(Im)をそれぞれ連結した励起状態分子内プロトン移動(ESIPT)型色素BTImP(Scheme 1)において、酸/塩基の刺激によってESIPT部位が切替わることに起因した固体蛍光クロミズムを観測した2)。BTImPは元々Im側に形成された水素結合でのESIPTに由来した緑色蛍光を示すが、酸性下ではImがプロトン化されることにより水素結合がBT側に切替わり、橙色のESIPT蛍光を示すようになる。プロトン化したBTImPの溶液中での蛍光特性を詳細に調べたところ、添加した酸 (HX, X=BF4-,Cl-,ClO4-,)の濃度や種類に応じて、白を含めた多彩な蛍光色が発現することを見出した。そのメカニズムについて考察した結果を報告する。
2.実験(Experimental)
本実験では、MS及び1H-NMRで生成物の同定を行った。
また、蛍光スペクトルを測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
緑の蛍光を示すBTImPのジオキサン溶液に、酸濃度の異なるHClO4水溶液を加えると、Fig. 1に示されるようなスペクトル変化が観測された。H+濃度上昇に伴って蛍光色は緑(極大波長λmax=547 nm)から黄、橙へと変化し、H+のBTImPに対するモル比(H+(mol)/BTImP(mol))が3.5×10-3の時にはλmaxは605 nmに達し、赤になる。その後、モル比が0.1を超えたあたりから480 nm付近に新たなバンドが出現し始めた。更なるH+の増加で480 nmバンドが優勢になり、青へと変化した。RGB蛍光の起源はStokesシフトの大きさから、GがIm側でのESIPT発光(ケト発光), RがBT側でのESIPT発光(ケト発光)、BがBT側でのESIPTがClO4—イオンによって妨害された結果のエノール発光と帰属できる。一方で、HBF4では添加後、時間経過と共に480 nmバンドが徐々に増大し、赤から白、青への蛍光色変化は時間や温度に依存して観測される。また、ジオキサンと同じエーテル系の溶媒であるTHFを用いた場合では、アニオンの種類にかかわらず480 nmバンドは増大しない。以上の結果から、プロトン化されたBTImPと共役塩基アニオンとの相互作用が多彩な蛍光色発現のカギを握っていると考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
参考文献
1)Y. Yang, M. Lowry, C. M. Schowalter, S. O. Fakayode, J. O. Escobedo, X. Xu, H. Chang, T. J. Jensen, F. R. Fronczek, I. M.Warner, and R. M. Strongin, J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 14081–14092.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
2) K. Sakai, S. Tsuchiya, T. Kukuchi, and T. Akutagawa, J. Mater. Chem. C 2016, 4, 2011–2016.
6.関連特許(Patent)
なし







