利用報告書

c-FLIPタンパク質の新規機能獲得に関する検証(第3期)
酒巻和弘
京都大学大学院生命科学研究科

課題番号 :S-19-MS-1041
利用形態 :装置利用
利用課題名(日本語) :c-FLIPタンパク質の新規機能獲得に関する検証(第3期)
Program Title (English) :Structural analysis of c-FLIP proteins with ESR
利用者名(日本語) :酒巻和弘
Username (English) :Kazuhiro Sakamaki
所属名(日本語) :京都大学大学院生命科学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Biostudies, Kyoto University

1.概要(Summary )
 c-FLIPは、システイン-プロテアーゼであるcaspase-8(以後CASP8と表記)と同じタンパク質構造を有しながら、プロテアーゼドメインの活性中心部位に変異が生じたために、プロテアーゼ活性を失したタンパク質であり、制御分子としてCASP8の活性化を抑制する働きがある。c-FLIPは、脊椎動物に進化した時にCASP8から派生した分子であり、顎口類へと進化する前にプロテアーゼとしての機能を失くしており、その後はCASP8に比べ分子進化速度が早くなっている。しかし、活性中心部位のHisとCysがArgとTyrに置換後は脊椎動物間で両アミノ酸は不変的に保存されている。加えて、c-FLIPはCASP8の酵素活性を抑制するだけでなく、抗酸化分子としても働くことが報告されている。これらのことからc-FLIPは、進化の過程でプロテアーゼ活性を失した機能不全分子へと変化したのではなく、何らかの機能を新たに獲得した可能性が考えられた。
 これまでにc-FLIPが過酸化酵素の性質を有している可能性を探るため、この酵素に特徴的な鉄結合の有無について調べ、Fe-Sの形状として鉄が取り込まれている可能性を見出した。本研究ではさらにc-FLIPの変異体を調べることでc-FLIPが鉄結合タンパク質であることを検証した。

2.実験(Experimental)
 CASP8には無く、c-FLIPにおいて脊椎動物の間で保存されているCys残基に着目し、このアミノ酸をAlaに置換したc-FLIP変異体を作製した。このc-FLIP変異体を発現している大腸菌の塊を石英管に封入し、これまでと同様に電子スピン共鳴機(Bruker E500)を使って絶対温度10Kと50Kの条件下でスペクトルを測定した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 ヒトc-FLIPの変異体が発現している大腸菌では、2Fe-2Sクラスター型を示す特異的なスペクトルの減少が認められた。ヒトc-FLIPの野生型が示す波形は検出できず、これまで調べたコントロールの大腸菌やヤツメウナギのc-FLIPを発現した大腸菌を調べた結果と類似していた。ヤツメウナギのc-FLIPには他の脊椎動物で保存されているCys残基が本来存在していない。これらの結果をまとめると、ヒトc-FLIPは鉄結合タンパク質である可能性が高く、Cys残基が結合に関与しているといえる。
 過酸化酵素の活性部位がArgとTyrで構成されていたことから、c-FLIPが過酸化酵素の性質を進化的に獲得した可能性を想定し、過酸化酵素の特徴の一つである鉄結合能を検証した。予想外なことに、c-FLIPにおいて鉄の含有は認められたものの、過酸化酵素とは異なった鉄の結合様式であることが判明した。今後、c-FLIPが新規機能を獲得したことを明確にするためにも2Fe-2Sクラスターが分子内でどのような働きを担っているのか調べる必要がある。

4.その他・特記事項(Others)
「なし。」

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
「なし。」

6.関連特許(Patent)
「なし。」

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