利用報告書
課題番号 :S-19-MS-1014
利用形態 :機器センター施設利用
利用課題名(日本語) :Co/Cu多層細線, NiPdナノ粒子の磁気的性質の解明
Program Title (English) :Magnetic Properties of Co/Cu multilayered nanowires and NiPd nanoparticles
利用者名(日本語) :嶋 睦宏1)
Username (English) :M. Shima1))
所属名(日本語) :1) 岐阜大学工学部化学・生命工学科
Affiliation (English) :1) Department of Chemistry and Biomolecular Science, Gifu University
1.概要(Summary )
Pdは自動車の排ガス浄化用の触媒や燃料電池の電極触媒に使用されており、今後も触媒としての需要の増加が予想される。しかし、産出量が少ないため、効率的な利用が重要である。Pdを触媒として効率的に利用するには、微粒子化して比表面積を増やす方法が有効であると考えられる[1]。さらに、PdをCoなどの強磁性元素と合金化することで、使用後の磁気回収が可能になる。
Co-Pd系バルク合金ではCo濃度が希薄であるとき、Coが周囲に存在するPdの磁気モーメントを誘起し、Co 1原子当たりの磁気モーメントがCo単体金属中での約1.7μBに比して増大し、約10μBに達する巨大磁気モーメントを示すと報告されている[2]。Pdと同様に触媒活性を有するPt系磁性合金の場合、このような巨大磁気モーメントの報告がないため、Pt系合金と比べてPd系合金では低いCo濃度であっても、比較的高い磁気回収効率が期待できる。しかし、ポリオール法により合成したCo-Pd系合金微粒子の構造及び磁気特性と触媒特性の相関に関する研究報告事例は少なく、その解明には詳細な研究が必要である。そこで本研究では、ポリオール法によりCo-Pd系合金微粒子を作製し、その構造及び磁気特性の相関の解明を目的とした。その結果、ポリオール法で合成したCo-Pd系合金微粒子は、熱処理前ではCoが十分に還元しておらず、格子定数がPdよりも大きく、飽和磁化Msは1 ~ 4 emu/gとかなり小さいが、還元雰囲気下での熱処理後は合金組成が均一になり、格子定数が合金のベガード則に従い、Msの値は合金で予想される磁化の組成依存性に近い値が得られ、巨大磁気モーメントが観測された。
2.実験(Experimental)
Co-Pd系合金微粒子をポリオール法により合成した。四つ口フラスコにPd前駆体のPd(acac)2、還元剤として1,2-ヘキサデカンジオール、溶媒としてジフェニルエーテル、分散剤としてオレイン酸及びオレイルアミンを投入し、N2ガスフロー中でオイルバスを用いて373 Kまで昇温した。次にCo前駆体のCo(acac)2を投入し、503 Kまで昇温して10分間保持し反応させた。前駆体の仕込み比を調整し、CoxPd100-x合金のCo組成xが3~68 [at.%]の試料を作製した。またx = 18, 45, 68の試料について873 Kで2時間熱処理を行った。作製した試料の組成をエネルギー分散型X線分析(EDX)、結晶構造を粉末X線回折(XRD)、微細構造を透過型電子顕微鏡(TEM)、磁気特性を振動試料型磁力計(VSM)及び超伝導量子干渉素子(SQUID)磁束計、合金中のCo及びPdの電子状態をX線光電子分光分析装置(XPS)を用いて各々、測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
熱処理前のCoxPd100-x合金試料について、TEMを用いて微細構造観察を行ったところ、図1に示すようにx = 3~68のいずれの組成でも平均粒径約5 nmの微粒子で構成されていることがわかった。これらの試料についてXRDを用いて結晶構造を調べたところ、いずれの組成でもfcc相に由来する回折ピークが確認された。
回折ピークから算出した格子定数aはベガード則に従わず、fcc Pdの文献値0.3890 nmより高くなった(図2参照)。SQUIDを用いて300 K及び5 Kにおける磁化測定を行ったところ、300 Kにおける飽和磁化Msは1 ~ 4 emu/g、5 KではMS= 5 ~ 10 emu/gで、いずれもfcc Coの文献値160 emu/gと比べかなり小さいことが分かった。これらの違いは、合成過程でPdは還元されて金属fcc相を形成するが、Coは完全には還元されず前駆体あるいはそれに近い状態で金属Pdに内包されるか周辺に析出したためと考えられる。
一方、熱処理後のCoxPd100-x合金試料についてXRD測定を行った結果、全ての試料で格子定数がベガード則よりも1 ~ 2%増大した(図2参照)。これは熱処理により試料の合金組成が均一になり、磁性合金で観測される磁気体積効果による体積膨張の影響と考えられる。SQUID磁束計による5 Kでの磁化測定の結果、均一Co-Pd合金で予想される磁化の組成依存性に近い値が得られた。測定結果から5 KでのCo 1原子あたりの磁気モーメントを計算したところ、x = 68で1.6μBとなり、Co単体金属の文献値に近い値が得られ、x = 18では3.4 μBに達する磁気モーメントが得られた。これはCo-Pd系合金の希薄Co濃度域でCo原子近傍のPd原子がスピン分極することによる巨大磁気モーメントと推察される。
4.その他・特記事項(Others)
参考文献
[1] 細川益男, 『ナノパーティクルテクノロジーハンドブック』, ナノパーティクルテクノロジーハンドブック編集委員会, (2006).
[2] R.M.Bozorth, et al., Phys. Rev. 122, 1157 (1961). [3] Keita Watanabe et al., Sci. Technol. Adv. Mater. 7, 145 (2006).
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Intrinsic and extrinsic antiferromagnetic damping in NiO, Moriyama, Takahiro; Hayashi, Kensuke; Yamada, Keisuke; Shima, Mutsuhiro; Ohya, Yutaka; Ono, Teruo, Physical Review Materials (2019), 3(5), 051402.
(2) Observation of longitudinal spin seebeck voltage in YIG films chemically prepared by co-precipitation and spin coating, Yamada, Keisuke; Kurokawa, Yuichiro; Kogiso, Kazuma; Yuasa, Hiromi; Shima, Mutsuhiro, IEEE Transactions on Magnetics (2019), 55(2, Pt. 1), 4500104/1-4500104/4.
(3) 櫻井太一、市川浩子、山田啓介、嶋睦宏、IEEE Magnetics Society 名古屋支部若手研究会(蒲郡)「共沈法で作製したCo2FeGa/Al2O3微粒子の構造及び磁性」(2020.01)
(4) 山本幹也、正木信也、近藤慶太、山田啓介、嶋睦宏、IEEE Magnetics Society 名古屋支部若手研究会(蒲郡)「共沈法により作製した多結晶Bi-YIG 薄膜の微細構造とスピンゼーベック起電力の相関解明」(2020.01)
(5) Kensuke Hayashi, Keisuke Yamada, and Mutsuhiro Shima, 2019 MRS Fall Meeting (Boston, USA), “Magnetic Properties of Co3-XNiXO4 (0 ≤ X ≤ 1.28) Particles Synthesized from Co1-YNiY(OH)2 Precursors”(2019.12)
6.関連特許(Patent)
なし。







