利用報告書

FeRh薄膜における磁化の温度依存性
黒川雄一郎
九州大学

課題番号                :S-20-NI-0034

利用形態                :技術代行

利用課題名(日本語)    :FeRh薄膜における磁化の温度依存性

Program Title (English) :Temperature dependence of magnetization in FeRh film

利用者名(日本語)      :黒川雄一郎

Username (English)     :Yuichiro Kurokawa

所属名(日本語)        :九州大学

Affiliation (English)  :Kyushu University

 

1.概要(Summary )

熱酸化Si基板上、およびFe5Y3O12(YIG)薄膜上にスパッタで成膜したFeRhについて、一次磁気相転移の有無および相転移温度を確認する。

 

2.実験(Experimental)

Fig. 1 Magnetization (M) of Fe48Rh52 film as a function of temperature (T) under magnetic field H = 3kOe

試料振動型磁力計(VSM)を用い、試料を室温から450℃まで昇温し、その後室温まで冷却しながら磁化測定を行う。試料はFeRh組成を微量変調した、熱酸化Si基板(0.38mm)/Fe52Rh48 50nm/SiN 5nmおよび、熱酸化Si基板(0.38mm)/Fe50Rh50 50nm/SiN 5nmである。さらに、この後に、熱酸化Si基板(0.38mm)/Fe48Rh52 50nm/SiN 5nm、熱酸化Si基板(0.38mm)/YIG 50nm/Fe50Rh50 50nm/SiN 5nmも追加で測定した。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

FeRh合金は等原子組成付近でCsCl型規則相を成し、高い規則度が得られた場合は室温近傍で反強磁性(低温)―強磁性(高温)の一次磁気相転移を発現する。本実験では、FeRhを介したスピン流を検出することが最終目的であるため、実績のある単結晶基板ではなくアモルファスの熱酸化Si基板を用い、さらにYIG多結晶膜の上にFeRhを形成した。事前に、X線回折によりCsCl型規則相が出来ていることまで確認したが、一次磁気相転移が見られる程度の規則度であるかは定かではない。そこで、まずは一次磁気相転移の有無を、FeRh組成を変調して確認した。

その結果、今回測定したいずれの試料においても、相転移は観測された。その一例として、図1に熱酸化Si基板(0.38mm)/Fe48Rh52 50nm/SiN 5nm多層膜試料のVSMによる磁化Mの温度T依存性の測定結果を示す。T = 280 KからT = 480 Kまでの間で磁化に大きな飛びが発生し、反強磁性から強磁性へ磁気状態が転移したことがわかる。しかしながら、昇温過程と冷却過程において磁化曲線が重ならないことから相転移点付近でのヒステリシスは非常に大きく、バルクに比べると品質の分布が大きいことが分かった。得られた相転移温度と組成の関係を、バルクのFeRh合金と比較し、今後のFeRh薄膜作成の指標とする。

 

4.その他・特記事項(Others)

VSM測定にあたり、名古屋工業大学 日原岳彦教授のお世話になったことをここにお礼申し上げます。

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

なし

6.関連特許(Patent)

なし

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