利用報告書

GaN結晶の転位評価
田中敦之1)
1) 名古屋大学 未来材料・システム研究所

課題番号 :S-17-NU-0011
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :GaN結晶の転位評価
Program Title (English) :Observation of dislocations in GaN crystal
利用者名(日本語) :田中敦之1),
Username (English) :Atsushi Tanaka 1),
所属名(日本語) :1) 名古屋大学 未来材料・システム研究所
Affiliation (English) :1) Nagoya University, IMaSS

1.概要(Summary )
 多光子励起顕微鏡を用いて窒化ガリウム(GaN)結晶中の転位の観察を行った。サンプルはGaN基板上にGaNエピ層を成長させたものを用いた。様々な方法で作製されたGaN基板上に同一条件でのエピ成長を行い、基板からエピ層への転位の伝搬の違いを観察した。その結果、直線的に伝搬するもの、基板/エピ界面で水平方向に移動するもの、エピ層で新たに転位が発生するもの等、基板の製法ごとに様々な形態をとることが観察された。
2.実験(Experimental)
装置:ナノバイオ分子合成・超解像解析評価システム
ニコン社製多光子励起顕微鏡
顕微鏡の基本的な機能を用いての観察。半導体であるGaNのバンドギャップは約3.4 [eV] = 約365 [nm]であるので、700nmの光源で主に2光子吸収での励起が起こる。励起が起こるとGaNは直接遷移半導体であるため正常な結晶部からは発光再結合によるバンドギャップ付近(365nm)の光が強く観察される。一方結晶欠陥である転位部では非発光の再結合過程が多いようで、バンドギャップ付近の光は弱くなる。この現象を多光子励起顕微鏡で観察すると、深さ方向にも発光、非発光の分布を得ることができ、GaN結晶中の転位の三次元像を取得することが可能となる。今回は様々な製法で作製されている各GaN単結晶基板(厚さ約350m)上にエピタキシャル成長層(厚さ約30m)を同一条件で作製し、転位の伝搬の違いを三次元的に観察した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 図1は各基板・各位置での転位の様子である。貫通転位密度が104cm-2台である基板アでは基板中(図1a)では転位がないが基板/エピ界面(図1b)で転位が発生し、エピ層中(図1c)では転位が二股に分かれて広がっていることが観察される。貫通転位密度が105cm-2台である基板イでは図1eに見られるように基板/エピ界面で転位が移動していることが観察される。貫通転位密度が106cm-2台である基板ウでは特別なことは起こらず、基板からエピ層へほぼ直線的な転位の伝搬が起こっていることが分かった。これらはその後、XRDによる測定によって、各基板の格子定数が違うことによって引き起こされていることが分かった。

4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 田中敦之 他, 第65回応用物理学会春季学術講演会, 平成30年3月19日
6.関連特許(Patent)  なし。

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