利用報告書

GPI-80によるレドックス制御機構の解析
武田裕司1), 浅尾裕信1)
1) 山形大学 医学部 免疫学講座

課題番号 :S-19-SH-0003
利用形態 :共同研究(協力研究)
利用課題名(日本語) :GPI-80によるレドックス制御機構の解析
Program Title (English) :Analysis of redox-regulation by GPI-80
利用者名(日本語) :武田裕司1), 浅尾裕信1)
Username (English) :Y. Takeda1), H. Asao1)
所属名(日本語) :1) 山形大学 医学部 免疫学講座
Affiliation (English) :1) Department of Immunology, Faculty of medicine, Yamagata university

1.概要(Summary )
 GPI-80はヒト好中球などに発現するglycosylphosphatidylinositol (GPI)アンカー型細胞表面分子でありレドックス制御活性を持つ可能性がある。GPI-80のファミリー分子であるVNN-1分子はビタミンB5の合成に関わるpantetheinase活性を持つことが知られているが、GPI-80については不明である。私達はGPI-80がpantetheinase活性によりcysteamineを作ることによりレドックス制御を行っているのではないかと予想した。そこで、GPI-80がpantetheinase活性を持つのかどうかを確かめるために、その基質であるpantothenate-7-amino -4methylcoumarin (pantothenate-AMC)の合成を依頼した。pantetheinase活性によって生じるcysteamineは、インフルエンザウイルスやヒト免疫不全症ウイルスなどの増殖を抑制することなどが知られている。cysteamineは新たな抗ウイルス治療の作用点として期待できる。
 今回合成するpantothenate-AMCを用いてGPI-80のpantetheinase活性を証明することが出来れば、将来的にはGPI-80をnanoparticle化し、炎症局所でcysteamineを作らせるという新たな抗ウイルス薬の開発につながるのではないかと期待している。
2.実験(Experimental)
 本研究は信州大学分子・物質合成プラットフォームにて、pantothenate-AMCの合成を依頼した(合成に使用した機器類については、当方では把握しておりません。すいません。)。
GPI-80発現・欠損細胞は、前立腺がん細胞株PC3を用い、レンチウイルスによる遺伝子導入とCRISPER/Cas9による欠損にて作製した。各測定は、各種プレートリーダーとフローサイトメトリーを用いた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 測定の結果、GPI-80発現細胞は、GPI-80欠損細胞と比較し、高いpantetheinase活性を示した(図1a)。また、VNN-1と同様のpantetheinase活性を有していた(図1b)。しかし、血漿中にもpantetheinase活性があったことから(図1c)、pantethinase活性自体は、広範な組織に存在すると考えられた。このことから、GPI-80のpantetheinase活性は、細胞表面局所での作用に、生物学的意義があると想定された。
 そこで、細胞内の酸化還元の状態を酸化型グルタチオン(GSSG)と還元型グルタチオン(GSH)の比率で測定したところ、GPI-80欠損細胞と比較し、GPI-80発現細胞では、GSSGの比率が増加していた(図2a)。抗ウイルス作用の一つの起点となるNF-κBの活性化は、酸化状態で高くなる。そこで、NF-κBの活性化を調べたところ、GPI-80発現細胞において、亢進していた(図2b)。
 これらのことから、GPI-80は、pantethinase活性を有しており、その作用は、細胞表面局所において作用することで、NF-κBの活性化状態を誘導すると考えられた。
4.その他・特記事項(Others)なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Takeda Yuji, Kurota Yuta, Kato Tomoyuki, Araki Akemi, Saitoh Shinichi, and Asao Hironobu: Function of GPI-80 on prostate cancer cell line, PC3 cells. 第48回日本免疫学会, 浜松; 2019年12月
6.関連特許(Patent)なし

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