課題番号 ：S-15-KU-0030
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：J会合性色素により構成される有機薄膜フォトダイオードを用いた光検出システムの開発
Program Title (English) ：Development of Photometric Detection Systems Using an Organic Photodiode Containing J-aggregates Cyanine Dye
利用者名（日本語） ：小野原　隼人
Username (English) ：Hayato Onohara
所属名（日本語） ：九州大学大学院工学府
Affiliation (English) ：Graduate school of engenering，Kyushu University

１．概要（Summary ）
　シアニン色素などのJ会合性色素は、薄膜形成時にJ会合体と呼ばれる特殊な会合体を形成することが知られており、このJ会合体は半値幅の狭い、非常にシャープな吸収スペクトルを示す。本研究では、有機薄膜フォトダイオード(Organic Photodiode, OPD)の光電変換層にJ会合性色素を用いることにより、特定波長域にのみ高い光感度を有する様なOPDの開発を目的とする。作製したOPDは、外部に特別な光学フィルタや分光器が不要な小型光検出器としての利用が期待される。

２．実験（Experimental）
　洗浄したITOガラス基板上にPEDOT:PSS水分散液をスピンコートし、120 ℃、10 minで乾燥させた。次に、シアニン色素NK-1952のメタノール溶液をスピンコートし、光電変換層の成膜を行った。その後、真空蒸着法によりBCPとAl電極の成膜を行い、フォトダイオード素子を作製した。
作製したOPDは、太陽電池特性評価システム(分光計器社製SRO-25GD)を用いて、Incident photon-to-current conversion efficiency (IPCE)スペクトルと電流密度-電圧(J-V)特性評価を行った。

３．結果と考察（Results and Discussion）
　電流-電圧特性評価の結果、作製したOPDの短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)、変換効率(PCE)の値はそれぞれ、-1.98×10−2 mA / cm2、0.52 V、0.27、2.79×10−3 %であった。また、図1に、ITO基板上にNK-1952色素をスピンコートし作製した薄膜の吸収スペクトルと測定したOPDのIPCEスペクトルを示した。NK-1952色素薄膜の吸収スペクトルおの吸収極大波長は543 nm、半値幅は28 nmであった。また、作製したOPDのIPCEスペクトルは色素薄膜の吸収スペクトルと同様の波長域において高い光感度を示しており、その最大感度は、547 nmで0.773 %であった。よって、J会合性色素のシャープな吸収スペクトルに基づいた、半値幅の小さいIPCEスペクトルを有するOPD素子を作製することができたことがわかる。今後は、この素子の分析分野における小型光検出器としての応用が期待できる。

４．その他・特記事項（Others）　
なし

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
小野原隼人, 石松亮一, 興雄司, 安達千波矢, 中野幸二, 今任稔彦, 日本分析化学会第64年会, 平成27年9月10日

６．関連特許（Patent）　
なし