利用報告書

NHS反応を用いたグラフェン表面への蛍光標識
斎藤 達朗
株式会社 東芝

課題番号 :S-16-NM-0111
利用形態 :技術補助
利用課題名(日本語) :NHS反応を用いたグラフェン表面への蛍光標識
Program Title (English) :Fluorescent labeling of graphene surface by using NHS reaction.
利用者名(日本語) :斎藤 達朗
Username (English) :T. Saito
所属名(日本語) :株式会社 東芝
Affiliation (English) :Toshiba Corp.

1.概要(Summary)
グラフェンはその優れた機械的特性、電気的特性等から幅広い応用が検討されている材料の一つである。ここでグラフェンはその表面などの化学修飾状態によって電気的特性が大きく変わることが知られており、その電子デバイスへの応用のためには修飾の制御が重要である。一方、グラフェン表面等の元素等を測定することは非常に困難である。今回、グラフェンへの化学修飾を目的とし、簡易的に評価できる蛍光分子を用いたグラフェン表面修飾を検討した。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
 遠心分離機
 蛍光顕微鏡
【実験方法】
10mg/Lの濃度になるよう調整した未修飾のグラフェン粒およびNH2基修飾グラフェン粒/DMSO混合物を20分間超音波処理を行い分散させた。蛍光標識の付いたNHSエステル(Alexa Fluor 488 NHS Ester)も同様に10mg/LとなるようDMSOに溶解させた。グラフェン混合物を50ul, NHS エステル溶液を5ul測り取り、光を当てないように1時間撹拌させグラフェンとNHSエステルを反応させた。限外濾過によりグラフェンと未反応NHSエステルを分離し、得られたグラフェンをDMSOに分散させた。グラフェン/DMSO混合物をスライドガラス上に塗布し、蛍光顕微鏡にて観察し、NHSエステルのグラフェン表面への修飾の有無を評価した。
3.結果と考察 (Results and Discussion)
Fig. 1に得られたグラフェンの顕微鏡像および蛍光像を示す。スポット1~3はスライドガラス上任意の点を観察したものである。Fig. 1より未修飾グラフェンを試料として用いたものでは顕微鏡でグラフェン粒が確認できる箇所に蛍光は見られなかった。それに対し、NH2エステルを修飾したものを試料として用いたものでは顕微鏡でグラフェン粒と確認できる箇所に蛍光標識が確認できる。このことから、今回用いたNHSエステルはNH2基のないグラフェン表面に吸着しておらず、NH2基に吸着、あるいは化学修飾されていると推察される。
今後、より詳細な結合や構造の解析を行い、現象の理解を深めていく。

4.その他・特記事項(Others)
技術支援者:森田 浩美、竹村太郎
実験の計画、実施、結果観察で支援を得た。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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