利用報告書
課題番号 :S-16-MS-1071
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :pn型分子多層膜の表面および内部構造に関する研究
Program Title (English) :Study on surface and interior structures of molecular p-n junctions
利用者名(日本語) :江口 敬太郎1)
Username (English) :K.Eguchi1)
所属名(日本語) :1) 名古屋大学大学院理学研究科
Affiliation (English) :1) School of Science、Nagoya University
1.概要(Summary )
分子薄膜における分子の配向をコントロールする方法として分子テンプレート法が注目されている。フタロシアニンの類縁体であるテトラキスチアジアゾールポルフィラジン(H2TTDPz)は、ガラスなどの基板上で基板に対して分子面を平行にしてスタックすることが報告されている[1]。そこで、H2TTDPz薄膜の分子テンプレート効果について検討するため、H2TTDPz薄膜上に銅フタロシアニン(CuPc)を蒸着した試料についてX線回折測定および走査電子顕微鏡観察を行った。その結果、配向したH2TTDPz薄膜上に蒸着したCuPcはH2TTDPzと同じく、基板に対して分子面を平行にしてスタックしていることが分かり、H2TTDPzの分子テンプレート効果が確認された。また、H2TTDPzは電子アクセプター性を示すため、CuPc薄膜との組み合わせにより、pn接合型の光デバイスとしての応用が期待される。
2.実験(Experimental)
低真空分析走査電子顕微鏡
(日立ハイテクノロジーズ社製SU6600)
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1にガラス基板上に作成したH2TTDPz薄膜とCuPc/H2TTDPz薄膜の表面および断面のSEM像を示す。H2TTDPz薄膜では、表面像より粒子状のコントラストが確認でき、断面像よりその粒子径が30-50nmであることが分かった。H2TTDPz薄膜上に蒸着したCuPc薄膜の表面像においても粒子状のコントラストが確認でき、断面像からその粒子径がH2TTDPz薄膜のみの粒子径と同様であることが分かった。X線回折測定の結果から、CuPcはH2TTDPzと同様に基板に対して分子面を平行にしてスタックしていることが分かっているため、H2TTDPzのドメインのサイズが保たれたまま、CuPcがカラム状に成長したものと考えられる。
図1.ガラス基板上の(a)H2TTDPz薄膜と(b)CuPc/H2TTDPz薄膜の表面と断面のSEM像.
4.その他・特記事項(Others)
<参考文献>
[1] Miyoshi et al, Angew. Chem. Int. Ed., 46 (2007) 5532.
<謝辞>
分子科学研究所分子機能研究部門の中尾聡研究員には走査電子顕微鏡測定において技術的な支援を頂きました。深く感謝申し上げます。
・KAKENHI(JSPS)「基板表面における有機ハーフメタルの創出」
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) K.Eguchi, S,Heutz and K.Awaga, J.Porphyrins Phthalocyanines (accepted).
6.関連特許(Patent)
なし