利用報告書
課題番号 :S-17-MS-1057
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :Yb2分子のレーザー分光
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :榎本勝成
Username (English) :
所属名(日本語) :富山大学理学部
Affiliation (English) :
1.概要(Summary )
イッテルビウム二原子分子(Yb2)の電子遷移のスペクトルはいまだ報告されていないが、量子化学理論計算によって、ポテンシャルエネルギー曲線は右図のように予測されている。本年度前期の施設利用研究で、理論計算の結果を参照して探索を行ったところその (1) 1u(1Πu) ← X 0g+ (1Σg+) 遷移の高分解能スペクトルを観測することができた、後期の本施設利用研究では、高濃度Yb2の分子線装置を改良し、より質の高い高分解能スペクトルの測定と詳細な解析を目的として、実験を行う。
2.実験(Experimental)
本研究では、650℃の高温でも安定に動作するオーブンノズルと分光測定用の真空装置を用いてYb2の分子線を生成し、機器センター所有の大出力ナノ秒パルス色素レーザーシステム(Coherent, Lambda Physik Compex Pro 110, LPD3002)によって高感度に分子からの発光を検出して、高分解能けい光励起スペクトルを、分光器(NikonP250)を使って分散けい光スペクトル測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
今回の施設利用実験では、分子線装置の高温ノズル部分に改良を加え、高いS/N比のYb2分子のスペクトルを観測した。図1は、Yb2 (1) 1u(1Πu) ← X 0g+ (1Σg+) 遷移の高分解能スペクトルである。観測されたほぼ等間隔のピークは振動準位間の遷移であり、基底状態および励起状態での振動エネルギー定数は、それぞれ32 cm-1, 150 cm-1と求まった。これらの値は、他のアルカリ土類の二原子分子から予測される値におよそ一致しているが、現在理論計算と比較しながら、詳細な解析を進めている。最終的には正確な分子定数とポテンシャルエネルギー曲線を決定して学術論文として発表したい。
4.その他・特記事項(Others)
本研究の遂行に当っては,山中孝弥技術課長補佐と機器センター(ナノプラット)事務室の兵藤由美子さんに大変お世話になりました.また、金属工作を指導して頂いた装置開発室の皆様に深く感謝いたします。