利用報告書

シリカを含有する三価クロム化成処理皮膜の断面構造評価
大口 優幸1)
1)ユケン工業株式会社

課題番号                :S-19-NI-0012

利用形態                :技術代行

利用課題名(日本語)    :シリカを含有する三価クロム化成処理皮膜の断面構造評価

Program Title (English) :

利用者名(日本語)      :大口 優幸1)

Username (English)     :Masayuki Oguchi1))

所属名(日本語)        :1)ユケン工業株式会社

Affiliation (English)  :1) YUKEN  INDUSTRY.CO.,LTD

 

 

1.概要(Summary )

最近、部品の耐久性を更に向上させる目的としてZnNiめっきが市場に展開されているが、高コストなプロセスであるため普及率は低い。それに対抗して、比較的安価と言われるZnめっき上に高防錆化成処理を施した代替プロセスが開発、提案されている。その化成処理の一例としてシリカを用いた三価化成処理があるが、詳しいことは分かっていない。まずは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて化成処理の皮膜厚さ、緻密性について評価したので報告する。

 

2.実験(Experimental)

鉄鋼上に酸性亜鉛めっきを約10μm被覆し、その後、シリカ含有の三価クロム化成処理を施したものが調査品である。FIBにて化成処理皮膜の最表面に保護膜(カーボン、アルミ及びタングステンの蒸着膜)を形成し、化成処理皮膜の断面構造が評価できるようにFIB加工してTEM試料を作製した。その試料に対し、TEM拡大観察を行った。なお、今回使用した透過型電子顕微鏡TEMは日本電子社製JEM-ARM200Fである。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

SEM(走査型電子顕微鏡)では困難であった化成処理皮膜の断面観察を行ったところ、膜厚は約600nmであった(図1)。従来のシリカ含有三価クロム化成処理では約100nmとの報告があるが、それと比較すると非常に厚い(約6倍)。今回の調査品が高い防錆力を有するのは、この化成処理皮膜の厚さが影響していると推察される。

次に化成処理皮膜の緻密性について観察した(図2)。サンプル表面の緻密性は低いが、内部に向かうほど緻密性の高い皮膜が形成されている。化成処理皮膜の形成はめっき溶解に伴う液のpH上昇を利用している。そのため、pH上昇し易いめっき表面近傍、pH上昇し難いサンプル表面で不溶性生成物の析出量が異なり、緻密性の差が発生したのではないかと推察する。

 

図1.化成処理皮膜の厚さ

図2.化成処理皮膜の緻密性

 

4.その他・特記事項(Others)

【謝辞】

本研究は名古屋工業大学 浅香透准教授のご協力のもと、遂行されました。厚くお礼申し上げます。

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

なし。

 

6.関連特許(Patent)

なし。

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