利用報告書

ナノ材料高分子複合材の実用化開発
新原健一1)
1) 株式会社富山環境整備

課題番号 :S-18-SH-0014
利用形態 :共同研究型支援
利用課題名(日本語) :ナノ材料高分子複合材の実用化開発
Program Title (English) :Development of Polymer composite with nanomaterials
利用者名(日本語) :新原健一1)
Username (English) :K. Niihara1)
所属名(日本語) :1) 株式会社富山環境整備
Affiliation (English) :1) Toyama Kankyouseibi, Co., Ltd.

1.概要(Summary )
セルロースナノファイバー(CNF)またはカーボンナノチューブ(CNT)による廃棄プラスチックの高機能化、高性能化を目指し、複合化技術開発と材料特性の評価を行った。CNFはTEMPO酸化触媒法と軽微なエネルギーにより木質パルプより生成される。TEMO酸化法により生成されたCNF(TOCN)は直径が3nmであり、水分散体として得られる。TOCN水分散体は従来の加工技術ではゴムや樹脂へ複合化することができないため、本研究では熱可塑性樹脂へ複合化する技術開発を行った。得られた複合体中でのTOCNの解繊状態、分散状態を評価するために当該プラットフォーム共通利用分析装置を使用した。
2.実験(Experimental)
TOCN水分散液と凝集抑制剤、溶媒置換剤を混合し脱水し、粉状の中間体を作製した。このとき凝集抑制剤を種々選択し、中間体を数水準準備した。準備した中間体を加熱混練り機にて熱可塑性樹脂へ複合化した。廃棄プラスチックへ複合化する前にバージン材を使用して最適条件を調査した。得られた複合体の凍結割断面を走査型電子顕微鏡(SEM:SU8000)にて観察し、熱可塑性樹脂中でのTOCNの解繊状態、分散状態を評価した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
開発した方法により得られたTOCN/ポリエチレン(PE)複合体の割断面SEM観察結果をFig.1に示す。割断面中において、TOCNの凝集物は確認されなかった。また、繊維状の物質もSEMで検出することができないことから、PE内でTOCNが再凝集することなく、解繊、分散していることが明らかとなった。凝集抑制剤、溶媒置換剤の種類、量を最適化することで、TOCNの熱可塑性樹脂への複合化方法を開発することに成功した。

Fig.1 SEM image of TOCN/PE composite.
開発した方法により得られた複合体の機械特性を評価したところ、バージン材と比較して、弾性率、降伏応力の向上が確認できた。また、複合化による破断時伸びの低下が小さく、複合化による破壊エネルギーの低下の小さい複合体を得ることに成功した。今後は材料の更なる最適化と、TEMを用いた構造観察を予定している。
4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本研究は農研機構生研支援センター「「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(異分野融合発展研究)」の支援を受けて行った。本研究の一部は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の支援によって行われた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) K. Niihara et.al., 第67回高分子討論会、平成30年9月14日
(2) K. Niihara et.al.,第27回ポリマー材料フォーラム、平成30年11月22日

6.関連特許(Patent)
なし

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