利用報告書

低粘度自動車エンジンオイルのナノトライボロジー計測
神谷健人1),伊藤伸太郎1),張賀東2)
1)名古屋大学大学院工学研究科, 2)名古屋大学大学院情報科学研究科

課題番号 :S-17-NU-0008
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :低粘度自動車エンジンオイルのナノトライボロジー計測
Program Title (English) :Nanotribology measurement of low viscosity engine oils
利用者名(日本語) :神谷健人1),伊藤伸太郎1),張賀東2)
Username (English) :K. Kamiya1), S. Itoh1), H. Zhang2)
所属名(日本語) :1)名古屋大学大学院工学研究科, 2)名古屋大学大学院情報科学研究科
Affiliation (English) :1)Graduate School of Engineering, Nagoya University, 2) Graduate School of Information Science, Nagoya University

1.概要(Summary )
自動車エンジンの燃費向上のためには,エンジンオイルの高性能化が必須である.近年,エンジンオイルは低粘度化の傾向にある.これはエンジン内部の摺動部材間の摩擦によるエネルギー損失を低減し,燃費を向上させるためである.ただし,低粘度化すると負荷容量が減少するため,摺動部品間の隙間が減少し,ナノメートルオーダとなることが想定されている.一方,エンジンオイルの性能向上には種々の添加剤が用いられるが,このようなナノ隙間における添加剤の作用機構は未解明である.本研究では,独自開発したナノトライボロジー計測法により,ナノ隙間でせん断されるエンジンオイルの摩擦現象と添加剤の作用機構の解明を目的とする.
 添加剤には,摩擦調整剤,粘度指数向上剤,清浄剤,極圧剤などがある.それぞれ異なる目的で用いられるが,本研究では代表的な添加剤として摩擦調整剤のひとつである脂肪酸添加剤に着目する.脂肪酸を潤滑油に添加すると,機械部品表面に吸着層を形成し,摩擦係数を下げる効果があることが知られている.ただし,脂肪酸は潤滑油への溶解度が低いため,微粒子として油中に残存する可能性があり,ナノ隙間においてはその粒子サイズが無視できず,摩擦特性に影響を及ぼすことが想定される.そのため,脂肪酸の粒径分布を測定し,摩擦特性との相関を明らかにすることを狙いとした.粒径分布の測定において,ナノテクノロジープラットフォームの粒径測定装置を利用した.
2.実験(Experimental)
 エンジンオイルには主に炭化水素系の油が用いられるが,本実験では疑似エンジンオイルとしてヘキサデカンを用いることとした.脂肪酸添加剤の代表的な試料として,本研究ではステアリン酸を用いることとした.ヘキサデカンにステアリン酸を濃度0.01Mで溶解したサンプルを作成し,粒径測定装置で粒径分布を測定した(使用装置:大塚電子社製ELSZ-2).また粒径の温度依存性についても検証した.
3.結果と考察(Results and Discussion)
 測定結果を図1に示す.25℃,35℃,45℃のそれぞれについて三回測定し,その平均粒径と温度の関係を図1(d)に示す.温度の増加に伴う粒径の減少を確認できた.今後は本測定結果と摩擦特性の相関を検証する.

図1.ヘキサデカンにステアリン酸0.01Mを溶解した疑似エンジンオイルの粒径分布測定結果.(a)25℃, (b)35℃, (c)45℃, (d)平均粒径と温度の関係
4.その他・特記事項(Others)
なし.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし.
6.関連特許(Patent)  なし.

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