利用報告書

固体NMRによる湿式シリカの化学結合状態の解析
下司 辰郎
株式会社TKX 研究開発本部

課題番号 :S-17-NU-0015
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :固体NMRによる湿式シリカの化学結合状態の解析
Program Title (English) :Solid-state NMR Characterization of Gel-type Silica
利用者名(日本語) :下司 辰郎
Username (English) :T. Gueshi2)
所属名(日本語) :株式会社TKX 研究開発本部
Affiliation (English) : TKX CORPORATION

1.概要(Summary )
湿式シリカの化学結合状態の解析を固体NMR装置で行えることが既にわかっている(1)。今回試作した湿式シリカと市販の2種類の湿式シリカの合計3試料の化学結合状態を29Si NMRにより比較した。
その結果、試作した試料は、市販の2試料に比較して、シラノール基のないQ4シグナル、シラノール基が1個ついたQ3シグナル、シラノール基が2個ついたQ2シグナルの存在比に有意差が見られた。

2.実験(Experimental)
 29Si NMRにより、3試料の化学結合状態を比較した。まず、試作試料にSi-OH(シラノール基)が存在することを確認するため、CP/MAS法で定性分析を行った。次に、結合種の定量比較を行うため、DD/MAS法による測定を行った。オスミウムコートした粒子をSEM観察して一次粒径の比較を行った。
利用装置:
・Bruker社製AVANCE 300Wbs
・JEOL社製JSM-7500F

3.結果と考察(Results and Discussion)
①CP/MAS 29Si NMR
 3試料のCP/MAS 29Si NMRスペクトルを得た。CP/MAS法は、プロトンからの磁化移動を通して測定するため、シラノール基のついたSiシグナルが強調して観察される。試作試料はスペクトルがブロードであるが、Q4、Q3、Q2のシグナルが観測された。
②DD/MAS 29Si NMR
 3試料のDD/MAS 29Si NMRスペクトルを得た。DD/MAS法の場合、直接29Si核を励起するため、各シグナルの定量比較が可能となる。いずれのスペクトルもシグナルがブロードであるため各シグナルを明確に分離することはできなかった。このため、Q4とQ3の境界を-105ppm、Q3とQ2の境界を-94ppmと仮定して積分曲線を分離すると、各シグナルの存在比は表1のようにおおまかに見積もられた。市販の2試料に比べて、試作の試料にはQ3、Q2の存在が多く、シラノール基が多く存在すると考えられる。

 表1. 3試料の結合種の定量比較
Q2 Q3 Q4
試作試料 11% 40% 49%
市販品A 5% 26% 69%
市販品B 3% 30% 67%

③SEM観察
 3試料のSEM写真を比較した結果、試料間での一次粒径の差は明確に認められず、いずれも20nm付近と思われる。

4.その他・特記事項(Others)
(1)㈱住化分析センター Technical News TN319
(2)本課題の遂行において名古屋大学坂口佳充氏、林育生氏の支援を受けた。林氏には、固体NMRおよびSEM観察を実施して頂いた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

©2024 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.