利用報告書

放射線劣化吸着材の薄片切出し
宮﨑康典、木部智、佐野雄一
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

課題番号 :S-17-MS-1056
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :放射線劣化吸着材の薄片切出し
Program Title (English) :slicing a degradated adsorbent by gamma radiation
利用者名(日本語) :宮﨑康典、木部智、佐野雄一
Username (English) :Y. Miyazaki, S. Kibe, Y. Sano
所属名(日本語) :国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
Affiliation (English) :Japan Atomic Energy Agency

1.概要(Summary )
日本原子力研究開発機構では、核燃料サイクルで発生する放射性廃棄物の処理・処分の負担軽減に取り組んでいる。使用済燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃液(HLLW)は核分裂生成物に加え、マイナーアクチノイド(MA; Am、Cm)を含んでおり、現行再処理計画ではガラス固化体として地層処分される。しかし、長寿命核種や発熱性核種であるMAが主な要因となり、非常に長期間の放射線管理やそれに伴った環境負荷を考えなければならない。そこで、湿式再処理プロセスに組み込むことができ、金属イオンの選択的な分離回収や使用済シリカのガラス原料への利用等、広く応用可能な抽出クロマトグラフィの技術開発を進めている(1)。
抽出クロマトグラフィに用いる吸着材は、多孔質シリカ粒子にスチレン-ジビニルベンゼンポリマーを塗布した複合粒子(SiO2-P)に、CMPO抽出剤を含侵させて使用する。ポリマー架橋度に応じて、抽出剤の表面分布が変化することが明らかになっている(2)。技術的な課題として、有機物である抽出剤がHLLWからの高線量放射線によって分解し、性能が低下する点が挙げられる。吸着材の表面や深さ方向に対して分解物の発生挙動を把握する目的で、ガンマ線を照射したCMPO吸着材について、切出し加工を行った。

2.実験(Experimental)
電子顕微鏡 集束イオンビーム加工機(JEOL社製、JEM-9310FIB)を用いた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
ガンマ線0.0MGy、0.5MGy、1.0MGy、2.0MGyの照射線量を付与したそれぞれの劣化吸着材から、横10µm×厚さ20µm×深さ300nm程度の薄片を切り出した。図1にガンマ線 1MGyを照射したCMPO吸着材の薄片切出し加工の様子を示す。まず厚さの調整を行い、最後に切り離す工程により、目的とする薄片を得た。

図1 CMPO吸着材からの薄片切出し

4.その他・特記事項(Others)
参考文献:
(1) Y. Wei et al., Nucl. Technol., 2000, 132, 413 – 423.
(2) Y. Sano et al., J. Nucl. Sci. Technol., 2017, 54, 1058 – 1064.

謝辞:
実作業に当たり、吸着材を加工していただいた中尾様にお礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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