利用報告書

高分子保護金属クラスターの電子状態に関する測定
本橋優香,笹井賢司, Vinsen, 阪井友紀奈, 燒山佑美, 櫻井英博
大阪大学大学院工学研究科

課題番号 :S-17-MS-1062
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :高分子保護金属クラスターの電子状態に関する測定
Program Title (English) :Measurement of electric state of the polymer-protected metal clusters
利用者名(日本語) :本橋優香,笹井賢司, Vinsen, 阪井友紀奈, 燒山佑美, 櫻井英博
Username (English) :Yuka Motohashi, Kenji Sasai, Vinsen, Yukina Sakai, Yumi Yakiyama, Hidehiro Sakurai
所属名(日本語) :大阪大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Engineering, Osaka University

1.概要(Summary )
 当研究室では、金属コロイド表面で誘起される特異な触媒活性および、そのマトリクスの影響について研究を行っている。有機高分子を用いた弱い相互作用により安定化した系では、擬均一分散系においても活性金属表面が露出することで、極めて高い触媒活性が発現すると同時に、触媒活性は弱い相互作用を介した高分子マトリクスからの摂動だけでなく、コロイドのモルフォロジーそのものからも大きな影響を受けることを明らかにしている(Sci. Rep. 2017, 7, 9579.)。
すなわち、分子量分布の異なるポリビニルピロリドン(PVP)を保護マトリクスとして用い、空気酸化反応の一例として、アルコールの酸化反応について検討したところ、その分子量分布に依って触媒能が最適となるサイズが大きく異なり、例えばK=30(Mw=40,000)の場合は1.1 nmとより小さなクラスターが最大活性を示すのに対し、K=90(Mw=360,000)では7 nm付近のより大きなサイズの方が活性で、しかもその活性はこれまで用いてきたPVP(K=30)を遥かに凌駕していたことがわかった(図1)。高分子からの化学的摂動に違いはないはずにもかかわらず、このような顕著な触媒活性の変化が観測され、しかも、クラスターサイズが小さい方が活性であるという従来の常識を覆す結果である。この触媒活性と直接相関するデータは、真空条件、高分子マトリクス存在下で測定したXPSであり、より低エネルギー状態の金表面、すなわち、より負電荷を帯びた金表面が生成した時に、触媒活性が向上したことがわかる(図2)。今回は、本系をさらに拡張し、金に対して、0.5層相当のパラジウムをドープしたAu/Pdクラスターについて、同様の電子状態解析を行うことを目的とした。

図1.PVPの鎖長、クラスターサイズと触媒活性の関係

図2.各金クラスターのAu4f7/2のBE値
2.実験(Experimental)
X線光電子分光装置 Omicron EA-125を用いた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
データの一貫性を考慮し、以前に報告した金クラスターの系で用いた装置をそのまま用いることにしたが、もともと高分子マトリクス存在下でのXPS測定は高感度が必要なうえ、さらに低濃度のPdの4dバンドはAuとオーバーラップしてしまうことから、残念ながら、今回は信頼性のあるデータを取ることができなかった。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし

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