利用報告書

鮮明な印刷の実現に向けた塗料および印刷表面層組成の評価・開発
石本幸生
株式会社マサル

課題番号 :S-18-NU-0037
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :鮮明な印刷の実現に向けた塗料および印刷表面層組成の評価・開発
Program Title (English) :Development of suitable inks and printing surfaces for clear printing
利用者名(日本語) :石本幸生
Username (English) :Y. Ishimoto
所属名(日本語) :株式会社マサル
Affiliation (English) :MASARU Co., Ltd.

1.概要(Summary )
水圧転写技術は、あらゆる形状に対して平面はもちろん、従来不可能とされていた曲面や立体面など三次曲面への加工も思いのままに実現することが可能な印刷技術である。
本技術を用いたインクジェット印刷工程で、インクジェット粒子がつぶれて隣周辺の粒子と混じることでにじむ現象が起きている。この解決に向けて、既存塗料や印刷表面層等の成分分析を行い、その組成から、配合すべき溶剤や表面コート材等の方針を検討・確立し、鮮明な印刷を実現することを目指している。本年度は、まず各種インクについての把握から着手した。

2.実験(Experimental)
 にじみ現象に差異のあるインク3種を使用して、溶剤、バインダを中心とした組成分析を行った。溶剤組成分析は、インクを重クロロホルムで希釈した状態で1H NMR測定を行うことで行った。バインダ分析は、インクを乾固後クロホルムで抽出し、可溶分についてIR測定を行うとともに、重クロロホルムに再溶解して1H NMR測定を行うことで分析した。
測定機器
NMR(500MHz)装置:Agilent製 UNITY INOVA 500
FT-IR:JASCO社製 Ft-IR-680 Plus

3.結果と考察(Results and Discussion)
 インク3種の溶剤分析を1H NMRで行ったところ、2種については2種類の溶剤が同様に使用されていることが確認され、その組成比も決定できた。もう1種については1種の溶剤のみが使用されていることがわかり、溶剤の同定ができた。
 バインダ分析のIR測定では、有機染料が使用されているインクについてはバインダのみのスペクトルを得ることはできなかったが、有機染料単独のスペクトルを用いて差スペクトルとすることで、バインダのみのスペクトル情報を得た。1H NMRの情報と合わせて、2種のインクには同系統のバインダが使用されており、他の1種には異なるバインダが使用されていることが確認された。
 今後は、印刷表面コート層の組成分析結果と合わせて、にじみの出にくいインク、印刷層の設計を進めていく。

4.その他・特記事項(Others)
 本利用にあたっては、あいち産業振興機構・松山豊様、中日信用金庫・谷口様、佐々木様、名古屋大学分子・物質合成プラットフォーム坂口佳充特任教授、技術支援員近藤一元氏、伊藤始氏の支援をいただいた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
 なし

6.関連特許(Patent)
 なし

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