利用報告書
課題番号(Application Number):S-15-NR-0026
利用形態(Type of Service):共同研究
利用課題名(日本語) :ホスホールを母核とする高発光材料の探索
Program Title (English) :Research on highly emissive materials containing phosphole skeletons
利用者名(日本語) :俣野善博
Username (English) :Y. Matano
所属名(日本語) :新潟大学理学部
Affiliation (English) :Niigata University
1.概要(Summary )
ホスホールは、ピロールの窒素がリンで置換された化合物であり、リン上の多彩な化学修飾が可能なことから、有機LEDをはじめとする様々な有機デバイスの材料として近年注目を集めている1。しかしながら、電荷を持つ官能基がπ共役ホスホールの光物性に与える影響についてはほとんど調べられていなかった。そこで、リン上が四級化されたホスホニウム塩型の2-アリールベンゾ[b]ホスホールを題材として選び、その構造を明らかにしたうえで、π系の発光特性に対する対アニオンの効果を系統的に調べた。
2.実験(Experimental)
利用装置:単結晶X線解析装置。
本装置を用いて、発光性ホスホール誘導体の結晶構造解析を行った。
そのほか、化合物の合成および基礎物性の評価は新潟大学で行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
目的物1~4は、2-フェニルベンゾ[b]ホスホール2とヨードメタンあるいはヨードベンゼン/パラジウム触媒との反応、および、引き続く対アニオンの交換により合成した。得られた誘導体の一部については、X線結晶構造解析によりその構造を明らかにした。右頁図に、化合物1の構造を示す。
合成した2-アリールベンゾ[b]ホスホール誘導体はいずれも蛍光性を示したが、その発光強度は、対アニオン、溶媒、濃度に大きく影響されることが明らかとなった。そこで、種々の条件下でNMR測定と蛍光寿命測定を行った結果、化合物1と3については、発光強度が対アニオン(ヨウ化物イオン)の重原子効果の影響を強く受けることが示唆された。得られた結果は、ホスホールを母核とするイオン性発光性材料を開発する上で重要な知見になると考えられる。
図:化合物1の結晶構造
4.その他・特記事項(Others)
参考文献:
(1) (a) T. Baumgartner and R. Réau, Chem. Rev., 2006, 106, 4681. (b) Y. Matano, Chem. Rec., 2015, 15, 636.
(2) T. Sanji, K. Shiraishi, T. Kashiwabara, and M. Tanaka, Org. Lett., 2008, 10, 2689.
協力研究者:物質創成科学研究科、山田容子教授
共同研究者:同志社大学理工学部、木村佳文教授
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
Y. Koyanagi, Y. Kimura, and Y. Matano, 第42回有機典型元素化学討論会, 平成27年12月4日.
6.関連特許(Patent)
なし。







