利用報告書
課題番号 :S-15-KU-0021
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :リン酸カルシウムベクターの開発
Program Title (English) :Development of Calcium Phosphate vector
利用者名(日本語) :天雲 太一
Username (English) :Taichi.Tenkumo
所属名(日本語) :東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンター
Affiliation (English) :Division of Liaison Center for Innovative Dentistry Tohoku University Graduate School of Dentistry
1.概要(Summary )
細胞への遺伝子導入技術は癌細胞へのドラックデリバリーシステムへの応用を目的に広く研究開発が行われている。その中でウィルス性遺伝子導入ベクターは高い導入効率を示すため広く使用されているが、一方で、突然変異の可能性などの生体への危険性が指摘されており、非ウィルス性遺伝子導入ベクターの開発が行われている。しかし、その効果はウィルス性ベクターにまだ届かないのが現状である。我々はこれまでにリン酸カルシウムナノ粒子を基板とした遺伝子導入ベクターを開発してきた。同材料は付与するタンパクやポリマーにより遺伝子導入効率や細胞毒性が変化することを報告してきた。本研究では、アクタアルギニンを付与した場合のナノリン酸カルシウム遺伝子導入ベクターのゼータ電位、分散率および粒子サイズを測定し、表面性質を調べるとともに、遺伝子導入効及び細胞毒性を検討した。
2.実験(Experimental)
混合法を用いて以下の異なるペプチドを持ったDNA-リン酸カルシウムベクター(以下CaP)を精製した。
①オクタアルギニン(以下R8)(濃度0.1-10.0mg/ml)、
ポリエチレンイミン(PEI)もしくはプロタミンを付与したCaP
②DNAを-プロタミン複合体を内包し、オクタアルギニン、PEIもしくはプロタミンを付与したCaP
混和溶液は直ちに40000 rpm、30分間遠心分離機(CP80WX , Hitachi, 東京)にかけられたのち、超音波攪拌(UR-20P, Tomy, 東京)を行い、最懸濁液を作製した。
精製した各CaP粒子のゼータ電位、粒子径および分散率(PDI)を粒径測定・ゼータ電位測定装置(ELSZ-2型、大塚電子、大阪)を用いて測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
サイズ、分散係数ならびにゼータ電位はこれまでにも計測を行ってきたが、ばらつきが見られたことから、今年度に再度計測を行った。その結果を図1に示す
1)すべての粒子は100-600nmの範囲内にあり、ナノサイズであることが明らかとなった。2)PDIは0.2-0.5の範囲内を示し、水溶液中で十分に分散していることが明らかとなった。3)ゼータ電位については、全ての群で陽電位を帯びており、特にPEIやオクタアルギニンの濃度が高い場合に、強い陽電荷を示した。
昨年度の結果と比較して、各sampleを作成する際の混和時間や攪拌時間を長くすることで、付与するゼータ電位がより陽性となったことや、粒子径を小さくなったことから、より多くのペプチドがリン酸カルシウム粒子に結合したものと考えられる。
本事業で物性が明らかになった各種リン酸カルシウム粒子を用いて、ヒト未分化間葉細胞、HeLa細胞、Soas2細胞に対して遺伝子導入効率、細胞毒性について検討した。
4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本研究の一部は科学研究費助成事業(若手研究(B):課題番号26861667の助成を受けて実施されました。また、粒径測定・ゼータ電位測定において、九州大学 分子・物質合成プラットフォームの藤ヶ谷剛彦准教授に測定代行を依頼し、実施しました。ここに深甚なる謝意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Taichi Tenkumo, Juan Ramón Vanegas Sáenz, Yukyo Takada, Masatoshi Takahashi, Olga Rotan, Viktoriya Sokolova, Matthias Epple, Keiichi Sasaki. Gene Transfection of Human Mesenchymal Stem Cells (hMSCs) With a Nano-hydroxyapatite-collagen Scaffold Containing DNA-functionalised Calcium Phosphate Nanoparticles. Genes to Cells, 2016, in press.
(2) Taichi Tenkumo, Juan Ramón Vanegas Sáenz, Yukyo Takada, Masatoshi Takahashi, Keiichi Sasaki,Olga Rotan, Viktoriya Sokolova, Matthias Epple, 6th Hiroshima Conference, 平成27年10月25日.
(3) Juan Vanegas Sáenz, Taichi Tenkumo, Yuya Kamano, Egusa Hiroshi, Keiichi Sasaki.Amerian Association for Dental Research,平成28年3月17日.
6.関連特許(Patent)
なし







