利用報告書

塗膜の界面状態評価手法の検討
里川 雄一
DIC株式会社

課題番号 :S-15-KU-0020
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :塗膜の界面状態評価手法の検討
Program Title (English) :Characterization of the surface and interface of coating films
利用者名(日本語) :里川 雄一
Username (English) :Yuichi Satokawa
所属名(日本語) :DIC株式会社
Affiliation (English) :DIC Corporation

1.概要(Summary )
積層膜の界面状態が、膜全体の諸物性に与える影響は大きいと考えられるため、界面状態の評価技術の確立は、重要な課題である。しかし、通常界面は露出していないため、その評価技術は限られている。
動的二次イオン質量分析(DSIMS)法は、膜に一次イオンを連続的に照射しながら、発生する二次イオンの質量を分析することで、膜の深さ方向における元素の分布を評価することのできる手法である。
本検討では、元素のコントラストを有する二層の有機積層膜について、その界面状態をDSIMS法により評価することを目的とした。

2.実験(Experimental)
基板には、自然酸化膜付きのシリコンウェハを用いた。その上に二層の有機膜を順次製膜した。各層ともその膜厚は数百nmである。さらに帯電防止のため、膜厚20 nmのAu膜をスパッタリングにより設けた。
DSIMS測定は、動的二次イオン質量分析測定装置(SIMS4000, Atomika Analysetechnik GmbH)を用いて行った。一次イオンにはO2+ (4 keV, 20 nA) を用い、入射角度は45度、分析範囲は400 m×400 m、検出モードはnegativeであった。

3.結果と考察(Results and Discussion)
図1は、DSIMS測定から得られたデプスプロファイル(各イオンのカウント数のエッチング時間依存性)を示す。炭素のシグナルは、膜全体を通してほぼ同じカウント数で観測された。一方、上層にのみ含まれる元素Aは、エッチング開始から30分程度まで観測された後、その後カウント数が減少した。また、その減少に伴い、下層にのみ含まれる元素Bのカウント数が増加した。従って、エッチング時間が30分程度のところに、上下層の界面が存在すると考えられる。さらにエッチングが進むと、Siのシグナルが立ち上がった。これはエッチングが基板に達したことを示す。
今後の更なる検討のためには、界面厚みの評価が必要となる。一般に下層に由来するシグナル変化の微分曲線がガウス関数で表現できると仮定すると、そのピーク位置を界面として、また標準偏差の2倍を界面厚みとしてそれぞれ定義できる1。但し、界面厚みを絶対値として求めるには、プロファイルの横軸を時間から深さに変換しなくてはならない。そのためには、各層でエッチングレートが均一であること、かつ膜厚既知の試料での評価が必要となる。

図1. 積層膜のDSIMSデプスプロファイル。

4.その他・特記事項(Others)
参考文献
(1) Kawaguchi et al. Macromolecules 2001, 34, 6164.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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