利用報告書

有機化合物の低温における結晶構造と光物性との関連性に関する研究
務台 俊樹1), 吉川 功1)
1) 東京大学生産技術研究所

課題番号 :S-15-MS-1037
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :有機化合物の低温における結晶構造と光物性との関連性に関する研究
Program Title (English) :Relationship between crystal structure and photoelectronic properties of organic compounds
利用者名(日本語) :務台 俊樹1), 吉川 功1)
Username (English) :T. Mutai1) , I. Yoshikawa1)
所属名(日本語) :1) 東京大学生産技術研究所
Affiliation (English) :1) Institute of Industrial Science, the University of Tokyo

1.概要(Summary)
 固体で高効率発光を示す優れた有機固体発光物質の創出は学術・応用両面で重要な課題である。これまで、有機材料の発光制特性は主に合成化学的手法で制御されてきた。一方、分子の化学構造は変えずに、分子配列の違いに基づいて発光特性が変化する「集積構造依存型発光」を示す系が新しい固体発光物質として注目されている。

 我々は常温固体で緑色発光を示す化合物について、70 K付近で発光色が顕著に変化することを見出したが、申請者はこの温度条件で測定可能なX線回折装置を保有していない。そこで、分子化学研究所ナノプラットフォーム事業を利用し、低温でのX線結晶構造解析をおこなうことを計画した。これにより、発光特性変化の要因を結晶中の分子配列から議論することを目的とした。

2.実験(Experimental)
 対象化合物および参照化合物について単結晶X線回折装置(微小結晶用)Rigaku MERCURY CCD-3を使用して、25〜100 Kの温度領域で結晶構造解析をおこなった。装置管理者・岡野芳則氏の助言により、結晶試料のマウントには低温状態の維持に有利なガラスキャピラリを用いることとし、サンプルループは使用しなかった。
 X線回折測定は、2015年7月29日(水)14時頃から7月31日(金)12時頃まで実施した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 X線回折測定は概ね正常に終了した。結晶構造解析はRigaku CrystalClearによりおこなった。得られた結晶構造について温度依存性を検討したところ、いずれの分子について連続的な格子定数の変化が観察された。一方、分子のコンホメーションやパッキングのあらわな変化は認められなかった。発光色は温度の上昇/低下にともなって可逆的に変化することから、低温下での発光色変化は、発光性励起分子まわりのわずかな環境変化に起因するものと推定される。
 発光特性と結晶構造すなわち分子配列との関連性について、さらなる各種分光学測定と計算化学的手法によりその詳細を検討中である。

4.その他・特記事項(Others)
[謝辞] 測定に関する事前打ち合わせおよびヘリウムを用いるクライオスタットの使用方法と留意点について、分子科学研究所機器センター技術職員・岡野芳則氏にご指導いただいた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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