利用報告書

精密重合を基盤にしたバイオミメティック材料の開発
三浦佳子1), 瀬戸弘一1)2) 秋吉孝則1)、ツイシンナン1)、澁谷誠1)
1) 九州大学大学院工学研究院, 2) 日本学術振興会

課題番号 :S-15-JI-0003
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :精密重合を基盤にしたバイオミメティック材料の開発
Program Title (English) :Development of Biomimetic Materials based on the Precise Polymer Syntheses
利用者名(日本語) :三浦佳子1), 瀬戸弘一1)2) 秋吉孝則1)、ツイシンナン1)、澁谷誠1)
Username (English) :Yoshiko Miura1), Hirokazu Seto1)2), Takanori Akiyoshi1), Xinnan Cui1), Makoto Shibuya1)
所属名(日本語) :1) 九州大学大学院工学研究院, 2) 日本学術振興会
Affiliation (English) :1) Graduate School of Engineering, Kyushu University, 2) Japan Society for the Promotion of Science

1.概要(Summary )
リン酸とポリエチレングリコール(PEG)を側鎖にもつ高分子を共重合によって合成し、これを用いてヒドロキシアパタイト、及び歯の界面を修飾した。ヒドロキシアパタイトをモデル歯として、この界面において、細菌が付着する様子の変化について解析を行った。PEGを側鎖に有する高分子は、リン酸部分の錯体形成によって強く接着した。高分子の修飾によって、アパタイトの性質が変化して、微生物の付着が抑制されることがわかった。また、歯においても同様に微生物の付着を抑制した。アパタイト界面に対する高分子の付着はX線電子分光解析より詳細に解析し、材料に対する高分子の固定化が非常に早く強く起こることを明らかにした。

2.実験(Experimental)
アパタイト修飾用の高分子については、リン酸を持つメタクリレート(Phosmer)とポリエチレングリコールを側鎖にもつメタクリレート(PEG-MA)を共重合によって得た。この高分子とヒドロキシアパタイト、歯についてインキュベートすることで、吸着させた。得られたサンプルについてはX線電子分光解析(XPS, Shimadu-Kratos AXIS-Ultra DLD)によってヒドロキシアパタイト基板界面を観察した。
 また、高分子を修飾したヒドロキシアパタイト基板に対して、ブドウ球菌 (JCM 2414)の接着について検討した。一定数のブドウ球菌(108 CFU/mL)を播種して150分浸漬した。その後、2.5%グルタルアルデヒドを用いて、菌を固定化し、走査型電子顕微鏡によって接着した菌の数を測定した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
PhosmerとPEG-MAは水溶液中のラジカル重合によって、合成した。高分子の重合はモノマーの仕込み比どおりに定量的に行われた。合成については、1HNMRによって確認した。液体クロマトグラフィーを用いて分子量を測定した。
 合成したポリマーの水溶液に表面を清浄に洗浄したヒドロキシアパタイトを浸漬して、アパタイトの界面を修飾した。この界面をX線電子分光によって解析した(Figure 1)。ポリマーの固定化によって、C(1s)ピークの強度が増し、C=O結合のピークが出現した。アパタイトへの表面の修飾の相対的な修飾率について、C=O/Caのピーク比によって算出した。Poly(PEGMA)のみでも、アパタイトに一定量効果的に吸着するが、リン酸部位があることによって強固に吸着することがわかった。また、バッファー中での耐久試験でも、リン酸部位の重要性が示された。

Figure 3 The amount of bacteria adsorption on the modified hydroxyapatite surface.

 アパタイトをポリマーで修飾した界面に対して、ブドウ球菌の吸着を調べた。ブドウ球菌の吸着は、PEGが含まれているポリマーでは抑制されることがわかったが、一定量のPEG比が含まれていることが必要であり、PEGMAとPhosmerの割合を考えた場合に、PEGが0.3-0.7の割合で含まれる場合において、特に細菌の忌避活性が高いことがわかった。細菌の付着抑制については、プラークのモデルとして、種々の電荷を持つタンパク質、多糖を加えた場合にも細菌の付着抑制能を示した。

 特に、細菌の吸着抑制能の強い、PEGが50%, Phosmerが50%含まれている共重合体については、ブドウ球菌の吸着よく性能を豚歯においても同様に発揮することがわかった。

4.その他・特記事項(Others)
X線電子分光解析において、村上達也技官に技術相談から測定代行までを行っていただきました。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Cui, X.; Koujima, Y.; Seto, H.; Murakami, T.; Hoshino, Y.; Miura, Y. “Inhibition of Bacteria Adhesion on Hydroxyapatite Model Teeth by Surface Modification with PEGMA-Phosmer Copolymers”, ACS Biomater Sci Eng. 2016, 2, 205-212.
(2) Xinnan Cui, 國府島 由紀, 瀬戸 弘一, 星野 友, 三浦 佳子,Inhibition of Biofilm Adhesion on Hydroxyapatite Surface by Using PEG-Phosmer Copolymer,第64回高分子学会年次大会,2015.05.29.
(3) Xinnan Cui, Yuki Koujima, Hirokazu Seto, Yu Hoshino, Yoshiko Miura, “Inhibition of bacteria adhesion and protein adsorption on hydroxyapatite surface using PEG-Phosmer copolymers” Pacihichem 2015.
(4) 三浦佳子、細菌耐性を持つPEGMAブラシによる歯界面の修飾とその性質、第25回日本MRS年次大会,2015年12月9日

6.関連特許(Patent)
なし

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