利用報告書

SrTiO3基板上のBiFe1-xCoxO3薄膜の電場印加磁化反転
東 正樹、重松 圭
東京工業大学 フロンティア材料研究所、神奈川県立産業技術総合研究所

課題番号                :S-19-NI-0018

利用形態                :共同研究

利用課題名(日本語)    :SrTiO3基板上のBiFe1-xCoxO3薄膜の電場印加磁化反転

Program Title (English) :Magnetic reversal by electric polarization in BiFe1-xCoxO3 thin film
on SrTiO3 Sustrate

利用者名(日本語)      :東 正樹、重松 圭
Username (English)     :Masaki Azuma, Kei Shigematsu

所属名(日本語)        :東京工業大学 フロンティア材料研究所、神奈川県立産業技術総合研究所

Affiliation (English)  :MSL Tokyo Tech, KISTEC

 

 

1.概要(Summary)

SrTiO3 (001)基板上のマルチフェロイック酸化物BiFe0.9Co0.1O3(BFCO)薄膜のメスバウアースペクトルを測定し、既報のGdScO3基板上のものと比較して、スピンが薄膜面内により近いことが明らかになった。この結果を踏まえて、SrTiO3基板上のBFCO薄膜の電場印加磁化反転の結果を検証した。

 

2.実験(Experimental)

パルスレーザー堆積法によってSrRuO3 (10‒15 nm) / SrTiO3 (001)基板上に膜厚約100 nmのBFCOエピタキシャル薄膜を作製し、内部転換電子型メスバウアー分光を測定した。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

図1(a)に、BFCO/SrTiO3(001)薄膜から得られたメスバウアースペクトルを示す。左右対称なスペクトル形状であることから、バルクのBiFeO3に見られるサイクロイドスピン構造ではなく、BFCO/GdScO3(110)と同様のコリニアスピン構造を有していることがわかった。フィッティングから四重極分裂の値は− 0.219 mm/sと求まった。この値はBFCO/GdScO3(110)と同程度の負の値であることから、BFCO/STOのスピンは電気分極と垂直を成しており、電場印加による電気分極の反転に伴う磁化の反転の実現が期待される。

 

図1 .(a)  BFCO/SrTiO3(001)薄膜試料のメスバウアースペクトル (b) BFCOのFeスピンと入射γ線のなす角θの図示。Feのスピンは平均して紫の円錐上に存在する。

また、スペクトルのピークの強度比から、γ線の入射方向(=薄膜の面直方向)に対するスピンのなす角の平均値θ(図1(b)を参照)を算出したところ、80°と求まった。この値はBFCO/GdScO3(110)の値63°と比べて有意に大きい。これは、BFCOとSrTiO3の格子ミスマッチが大きいためために生じているエピタキシャル歪みのためと考察される。総合して、BFCO/SrTiO3(001)では、スピンがより面内に寝ているために、磁気力応答顕微鏡による磁化観察がやや難しくなると考えられるものの、電場印加磁化反転の観測が期待される。

 

上記の結果を踏まえて、Mn置換よって分極反転の安定性を高めたBFCO薄膜をSrTiO3(001)基板上に作製し、圧電応答顕微鏡・磁気力応答顕微鏡を用いた電場印加磁化反転の観測を試みている。Mn置換の効果により複数回の電気分極反転を行うことができるようになった。また、1回目の反転で電場印加による磁化反転を捉えることに成功し、メスバウアー測定と整合する実験結果が得られている。

 

4.その他・特記事項(Others)

昨年度の本利用課題は、文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム 令和元年度「秀でた利用成果」優秀賞を受賞した。

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation

・ Marin Katsumata, Haruki Shimizu, Keisuke Shimizu, Kei Shigematsu and Masaki Azuma, “Ferroelectric and Ferromagnetic Domain Switching using in-plane Electric Field in BiFe0.9Co0.1O3 Thin Film” STAC-11, 令和元年7月9日

他、国内学会発表5件

 

6.関連特許(Patent

なし。

 

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