利用者インタビュー

―先生のご研究を教えてください。

リポソーム(脂質二重膜)の内部にフラーレンを導入し、光線力学療法(新しい癌の治療方法として注目されている)のドラッグデリバリーシステムとして応用できないかという研究をしています。

 

―元々は材料のご研究をされていたのでしょうか

学生時代は様々な物質を “材料” として扱い、研究していました。卒業後2年間企業で研究開発をしていましたが、その時、実際に細胞を取り扱うようになりました。それから物質に対する見方が代わり、現在もバイオと材料の融合研究に取り組んでいます。リポソームの膜の中にフラーレンを導入する手法は現在の研究室の教授である池田先生が開発された手法ですが、膜中の物質の状態を調べることは簡単ではありません。そこで、私が別に研究をしていた金ナノ粒子を膜表面に吸着させ、ラマン増強効果により膜内部の物質の状態を調べれないかと考えました。

 

―今回、ナノテクノロジープラットフォーム 九州大学の装置を利用していただきましたが、きっかけを教えてください。

リポソーム膜の観察を行う際、ラマン分光が有効という事はわかっていたのですが、広島大には(都合の良い)装置がありませんでした。私は出身が九州大学ですので、先生方もよく知っていますし、装置があることも元々知っていたので、直接教員に伺ったところ、ナノプラ登録装置という事がわかりました。それで使わせていただきました。

柿田:ただ、先生がいらっしゃったときにラマン装置は、3つのレーザー波長のうち一つが故障しており、大変ご迷惑をおかけしました。ただ結果的には使える波長で観察できたのでよかったです。また、サンプル量が本当に僅かでしたので、なかなかピークが検出されず、焦点合わせに苦労致しました。露光時間等を増やすことで強度は得られましたが、宇宙線を考慮しなくてはいけませんので、N数を増やす等で対応させて頂きました。もともと蛍光を発するサンプルだとお聞きしておりましたので、測定には少し工夫が必要でした。こちらとしても新しいサンプルを測定することは知見が増えますので、引き続きご利用いただきたいです。

九大のラマン装置は「高速イメージング」が出来ることが特徴だと思いますので、ぜひ今後は実際の細胞などを持ち込んで測定してみたいです。

柿田:そうですね、レーザー波長も修理が済んでいると思いますので、また新たな測定をお手伝いできればと思います。

膜の構造・機能を解明したい

膜というのは流動性があり、非常に複雑なものです。例えば膜内に何かを挿入すると挙動や機能が変化することもよくあります。また、直接観察するにはTEMくらいしか手法はありません。ちなみに、TEMも過去にナノテクノロジープラットフォームの奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)を利用していました。最近の値上がりや、測定件数が制限されるため少し利用しにくくなってしまいましたが、クライオTEMのサンプル作成はNAISTでしかできない事でしたので、引き続きこちらも利用させていただく予定です。若手の研究者への支援も引き続きお願いしたいと思っています。

 

―今後の研究についての展望も教えてください

界面の化学は本当に複雑で興味深く、細胞膜表面の観察・機能解明をもっと進めたいと思っています。それには様々な分析手法や最先端の機器が欠かせません。広島大でも勿論装置はありますが、九州大学はより多くの装置が揃っています。もちろんNAISTなど他機関の技術や装置も欠かすことはできません。旧知の方がいるととても使いやすくていいのですが、今後他の機関で利用したい装置があれば、ぜひ共同研究なども視野に研究を進めていきたいと思います。

 

―分子研では今年度、高速AFMが導入されます。

使いたいと思っていたところです!ぜひ、ご紹介下さい。

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