利用者インタビュー

―千歳と恵庭は近いのですね―

弊社から千歳科技大までは近く、自動車で約30分前後です。距離的な利便性の良さを強く感じています。千歳科技大には機器を利用させてもらっています。使いたい時にはまず電話やメールで機器の予約を取ります。予定が合えばサンプルを持ってすぐにお伺いして作業を開始する、といったスタイルで利用しています。

―千歳科技大の機器が使えるというのを知ったきっかけは?―

JSTのコーディネーターの方が企画してくださった、千歳科技大ナノテクノロジープラットフォーム機器お披露目会に参加したのがきっかけです。弊社も新しい会社ですので、周辺大学との接点をこれから、という時にグッドタイミングでした。
それからずっと機器を利用させてもらっています。

―どのような機器を利用していますか―

私はセラミックコンデンサの材料開発を主として、プロセス技術も一部担当しています。その中で千歳科技大にお邪魔して特に使用するのはFE-SEMです。FE-SEMに付属のEDSを用いて各材料元素の分散性の評価を行っています。材料開発はどんな元素をどんな割合で用いると良好な電気特性や高耐圧・長寿命のセラミックコンデンサが出来上がるか?という材料組成の決定がメインになります。材料組成は単純ではなく、一度に多くの種類の材料元素を選びます。一方で、選択した多くの材料元素が所定のプロセス中で綺麗に分散されているかも大切な要素です。どんなに材料組成が良くても、分散が不十分だとその材料が本来持つ実力を十分発揮できません。つまり、分散性はセラミックコンデンサの電気特性や寿命に大きく影響を与えます。選択した材料元素はナノサイズの酸化物粒子となっているものをそれぞれ所定の量秤量し、混合・分散していきますが、粒子は細かいほど凝集しやすく、分散が難しくなる傾向にあります。また、近いサイズであってもその種類や表面状態によって分散のしやすさがそれぞれ異なります。選択する材料元素の種類が多くなればなるほどこれらを均一に分散することは容易ではありません。更に、取り扱う粒子もより微細なものとなり、技術的ハードルも高くなってきています。我々は、混合方法や分散剤の種類など、多岐に渡る検討項目に対し、技術や衆知を結集し改善に向けて取り組んでいます。その結果、良好な分散性が得られているのか?というとても重要な評価を千歳科技大の装置でやらせていただいています。
FE-SEM自体は弊社にもあるのですが、EDSは付属していません。一方、千歳科技大にあるFE-SEMは非常に高性能で、EDSが付いています。弊社も過去にEDSの購入を考えていたのですが、メンテナンスや維持費を考えた時、身近に利用できる大学があるのなら、と購入はせず、開発を続けています。北海道大学(微細構造解析プラットフォーム、先端物性共用ユニット APPOU)にもお世話になりました。TEMなど大型の装置は購入や維持が難しいので、身近に利用できるのは大変魅力的です。その他、TGなどの熱分析装置やX線回折を利用しています。一日に複数装置を並行して使用することもあります。

―ご自身で操作し、機器を使いに来ているそうですね―

はい、でも元々機器分析が専門というわけではなく、学生実験で使った程度でした。
千歳科技大では技術スタッフの方がとても親切で、ちょっとしたことでもすぐに聞けるので本当に気が楽です。利用する中で、使用方法のみならず、データの解釈についてはまったく知らない知見を乞う事もあります。先生も時間が空いた時には様子を見に来てくれ、その際に相談に乗ってくれます。時間が合わない場合は、ナノテクご担当の方が先生との時間調整をはじめ、気軽に相談できる環境を整えてくれます。相談環境も会議室で仰々しく…みたいなものではないので、若い人や初めて機器を使用する方、経験が浅い方が一人で使いに行っても大丈夫です。このような環境下で利用させていただけることで自身のスキルアップにも繋がっています。

―会社ではどのようなものづくりをされているのでしょうか―

弊社はセラミック電子部品の設計・開発・販売を行っています。主力は積層セラミックコンデンサです。
積層セラミックコンデンサはこんなに小さいのです。(初めて見ましたが小さい!)

積層セラミックコンデンサの用途は多岐に渡り、身近な所では携帯電話やパソコン、電化製品や車などに多く搭載されています

―社員11名の小さな会社ですが、開発で大変なことはありますか?―

弊社では高い電圧下でも安定して動作する積層セラミックコンデンサの開発に力を入れています。製造はグループ会社で行っていますが、この恵庭の会社でもサンプル品を試作できるラインを所有しています。開発・設計~試作までを一連でできます。その中で生じたトラブルや不明点は、ぱっと千歳科技大で機器を利用し、詳細な原因究明に当たります。所帯は競合他社さんに比べるとまだまだ小さく、人手面からも単独でできることは限られています。千歳科技大さんの高度な機器を利用して得られたデータを元に的確な対策を打てるおかげで、少ない人数の中でも効率的に開発を進められ、開発リードタイムの短縮に繋がっているように感じています。

―なぜセラミックコンデンサの開発を?―

もともとものづくりが好きでした。前職でもコンデンサ開発を行っていましたが、部署移動で一度品質管理部に回った事がありました。品質管理も素晴らしい仕事で、様々なことを勉強させていただきました。その中で、別の業務をしてみて、改めてものづくりが好きなのだと実感したことや、品質管理部で勉強した知識を活用して開発職をもう一度やってみたいという気持ちがありました。北海道出身ということもあり、ご縁あって、今はこの地で好きなものづくりを、かつもともと知識のあるコンデンサ業界で働けています。

―ナノテクノロジープラットフォームへの今後の期待を教えて下さい―

気軽に企業の人間が使えるという制度は今後も継続してもらいたいと願っています。将来、今まで経験のない分析を行いたいといったケースが出てくると思いますので、JSTの方のように、会社と大学をつないでくれる存在はありがたいです。地道な活動だとは思いますが、長期的な視点で見たときには個人・企業の技術力、ものづくり品質の向上に大きく寄与してくれるものと期待しています。
また、料金体系がお手頃なのは大きな魅力です。引き続き、お世話になりたいと思います。

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