利用者インタビュー

モータの重さが3分の1に

―まず御社ではどういった金型を製作しているのでしょうか。

弊社は1985(昭和60)年に創業した金型専門の会社です。他の会社では無理だと言われた一点ものの金型製作も請け負い、「技術力では負けない」という自負があります。例えば、ダイカストのアルミ鋳造であれば自転車や釣り具の部品、真鍮鍛造は水道関係といった製品に関わっています。

―CFRPに関心を持ったのはどうしてでしょうか。

6年ほど前に協力会社の方からCFRPという素材があるということを教えてもらいました。炭素繊維をプラスチックで押し固めたCFRPは、鉄よりも6倍の強度があり、重さは5分の1と軽い材料です。ただ、その素材には問題があり、皆さんが口を揃えて「切削が困難」だと指摘していました。それならばと弊社で削ってみたところ、こんなに削りやすいのかと思ったのを覚えています。素材の剛性を生かして横に力を加え、砥石で研ぐような感覚で粉末にしながらだと加工が簡単なのです。「このような素晴らしい素材を生かしたい」とすぐに利用方法について検討を始めました。世の中で役立つものと考えた時に思いついたのが“磁石”です。

―CFRPに磁性を持たせようと思ったわけですね。

そうです。弊社ではCFRPの成型についても研究を重ねていましたので、名古屋工業大学の江龍修教授との出会いをきっかけに、2年前から「磁性体添加CFRPによる軽量モータコアの開発」を共同研究してきました。江龍教授には、添加する磁性体の混合割合などをアドバイスいただき、モータコアとして機能できる強度が得られているかなどを確認してもらいました。こういった検証は弊社ではできませんので、ナノテクノロジープラットフォームを利用できたのは大きかったと思います。

―ところで、モータコアにCFRPを使うメリットはどこにあるのですか。

現在、モータのコア材には、ほとんどケイ素鋼板が使われており、鉄でできているために重く、重量によって回転時の負荷も大きくなります。さらに、コアが重いと慣性モーメントが高くなるので、止めようと思ってもすぐに止まりません。磁性体添加CFRPをコア材にすると、まず重さが3分の1になります。軽いので初速と高回転域に到達するのが速くなり、消費電力も少なくて済みます。また、回転を止めるのが容易で制御がしやすいという特徴があります。ただ、軽いだけに慣性モーメントが低く、止まりやすさが欠点でもあります。この欠点は、CFRPの磁気の通しやすさを上げることで解消しようと考えています。

磁性を持つのは世界初

―今後、このモータコアはどういったものに使われていくのでしょうか。

一定に回転する製品でしょう。例えば、扇風機や換気扇などです。発電機やポンプにはすぐに使えそうです。このモータコアは強度があり、熱にも強いので、どのような製品も小型化が可能です。

―モータコアの開発で磁性体添加CFRPが有用であることは間違いないでしょう。このように、CFRPが磁性を獲得した意義を教えてください。

実は、CFRPが磁性を持つのは世界初です。今回の開発で最も重要な点は、CFRPに別の材料を添加し、新たな機能を持ったCFRPを生み出したことなのです。例えば、銅を混ぜれば通電性の高いCFRPができたり、銀を混ぜれば抗菌作用のあるCFRPができたりするでしょう。このような新しいCFRPは、用途拡大につながるものだと考えています。

夢の素材をもっと流通させたい

―CFRPの切削技術や軽量モータコアは実際に使われているのでしょうか。

まだ、発表段階です。今年に大阪と岐阜で発表を行い、5社から引き合いがありました。現在は、CFRPの加工技術を教えてほしいという会社に講師として出向き、指導しています。CFRPは一部の繊維会社が独占している状態で、一般的な素材としては使われていません。我々の技術を一般化することは、CFRPの普及につながると思います。

―今後の展望を聞かせてください。

CFRPの利用では、ヨーロッパに比べて日本は10年遅れていて、世界との競争にも負けています。何と言っても価格が高く、20分の1まで下がらないと一般の製品には使えません。日本での利用は、車のボディやテニスのラケット、釣り竿など一部に限定されていて、日本人がCFRPの素晴らしさを知っているとは言えないでしょう。軽くて、強くて、腐らないCFRPは、鉄などのさまざまな材料に置き換えることが可能です。夢の素材が夢ではなく、日常的に流通する日が来ることを願っています。

この研究に関するお問い合わせ:名古屋工業大学

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