千歳科学技術大学

2013年度 成果事例

QCMセンサー脂質膜塗布法の開発とコク定量化への応用
日本電波工業株式会社
忍 和歌子

【研究目的】 人間の舌はコクを苦味や渋味、甘味などの「味成分」の吸着量で判断している。そこで微量な質量を計測できるQuartz Crystal Microbalance(QCM)システム(図1)を用い、味成分の吸着量を計測すればコクの定量化が可能になると考えた。今回舌の細胞膜を模倣した脂質膜をセンサー上に塗布して味覚センサーとし(図2)、サッポロビール?と共同で実際にビールのコクが計測できるか検討した。

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 図1:QCMシステム(日本電波工業?)

【成  果】 QCMセンサーは水晶片上に金薄膜を蒸着したものである(図3左)。この表面に均一に脂質膜を形成するためにはスピンコーターの使用が最適と考えた。脂質溶液をクロロホルムを溶媒として1mg/mL濃度に調製後、スピンコーター回転中に電極中心部に10uL滴下した。顕微鏡で表面観察を行ったところ、検討前は膜表面にムラが見られていたが(図3中央)、滴下時の回転数を2000rpmから4000rpmに上げることでムラが解消されて均一となることが分かった(図3右)。この味覚センサーを用いてビール8銘柄の周波数変化量を計測してコクの量とし(図4)官能試験と比較した結果、相関値が0.86と高いことが分かった(図5)。これは従来法と比較しても高値であり本センサーによるコク定量の実用化可能性が示された。

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図2:味覚センサー模式図

 

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図3:QCMセンサー電極部(左)と脂質溶液塗布後の金電極表面の顕微鏡写真。条件検討前(中央)、検討後(右)

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図4:味覚センサーによるビール計測波形例。コクがあるビールは味成分の吸着量が多い為、周波数変化量が大きくなる

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図5:ビール8銘柄の味覚センサーと官能試験の相関
・第47回 味と匂学会 2013年9月 仙台 (サッポロビール?と共同発表)
・CEATEC Japan 2013 2013年10月 東京

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