利用報告書

単原子層窒化鉄膜の電子・磁気状態の下地基板結晶面方位依存性
宮町俊生1), 服部卓磨1), 中島脩平1), 高木康多2,3), 横山利彦2,3) , 小森文夫1)
1) 東京大学物性研究所, 2) 分子科学研究所, 3) 総合研究大学院大学

課題番号 :S-17-MS-2014
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :単原子層窒化鉄膜の電子・磁気状態の下地基板結晶面方位依存性
Program Title (English) :Substrate-symmetry driven electronic and magnetic modifications in a monatomic layer
iron nitride
利用者名(日本語) :宮町俊生1), 服部卓磨1), 中島脩平1), 高木康多2,3), 横山利彦2,3) , 小森文夫1)
Username (English) :T. Miyamachi1), H. Takuma1), S. Nakashima1), Y. Takagi2,3), T. Yokoyama2,3), F. Komori1)
所属名(日本語) :1) 東京大学物性研究所, 2) 分子科学研究所, 3) 総合研究大学院大学
Affiliation (English) :1) Institute for Solid State Physics, The University of Tokyo
2) Institute for Molecular Science
3) The Graduate University for Advanced Studies (SOKENDAI)

1.概要(Summary)
 窒化鉄はFe4Nの組成比で室温強磁性をバルク形状で示し、元素戦略の観点から応用が期待されている。これまでに我々は、走査トンネル顕微鏡(STM)と放射光X線吸収分光/X線磁気円二色性測定(XAS/XMCD)によりCu(001)上に成長した原子層Fe4N薄膜(Fe2N単原子)を作製してその構造と電子・磁気状態の詳細を調べてきた[1,2]。本研究ではFe2N単原子の高い格子安定性に着目し、下地基板を対称性の異なるCu(111)に変えてナノスケールでのひずみを誘起したFe2N単原子膜[3]の電子・磁気状態をXAS/XMCD測定により明らかにすることを目的とした。

2.実験(Experimental)
 測定はUVSOR BL4BのXAS/XMCD装置を用いて全電子収量法にて行った(試料温度6.2 K、印加磁場 ±5 T)。Cu(111)上のFe2N単原子層の作製条件はSTMおよびLEED観察により事前に明らかにしており[3]、Cu(111)清浄表面への500 eVでのN+イオンボンバードメントによって作製したN/Cu(001)表面にFeを室温で蒸着し、約620 Kでの加熱処理により作製した。Fe2N単原子層の構造評価はXAS/XMCD測定前にLEEDにより行い、p4gm(2×2)表面再構成構造を有し、表面欠陥の少ない高品質な薄膜が形成されていることを確認している。XMCDスペクトル(μ+ – μ–)は円偏光ヘリシティと試料スピンが平行/反平行(μ+/μ–)なXASスペクトルの差分により得た。面直(θ = 0°配置および面内(θ = 55°)配置でXAS/XMCD測定を行い、Fe2N単原子層の容易磁化方向や磁気モーメントの大きさを調べた。θは試料表面のノーマル方向と入射X線間の角度として定義している。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 Cu(111)上Fe2N単原子層のXAS/XMCD測定の結果、面内配置でより大きなXMCDシグナルが観測され、Cu(001)上の結果と同様に、容易磁化方向が面内方向にあることを確認した[1]。しかし、XMCD総和則によりスピン磁気モーメントを見積もった結果、0.5μB/aomと、Cu(001)上の値1.1μB/atomに比べて著しく減少していることがわかった。さらに、Fe XAS L3吸収ピーク強度を印加磁場に対してプロットして磁化曲線を測定したが(L2吸収ピーク強度で規格化)、 面直配置と面内配置でその形状に大きな差は見られず、強い面内磁気異方性を示したCu(001)上の結果とは大きく異なることがわかった。STM表面構造観察の結果を考慮して、下地基板の対称性をCu(111)に変える事により表面に誘起されたナノスケールでのひずみがFe2N単原子層の電子状態を変調し、その結果、磁気特性を弱めたことが示唆される。

4.その他・特記事項(Others)
本研究はJSPS科研費 若手研究(A) 16H05963、基盤研究(B) 26287061、放送文化基金、島津科学技術振興財団および池谷科学技術振興財団の助成をうけて行われた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
・論文発表3件, 学会発表9件
[1] Y. Takahashi et al., Phys. Rev. B 95, 224417 (2017).
[2] K. Ienaga et al., Phys. Rev. B 96, 085439 (2017).
[3] T. Hattori et al., Phys. Rev. Materials accepted.
6.関連特許(Patent)
なし。

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