利用報告書

遷移金属酸水素化物の電子状態評価
松井直喜1), 岩崎佑紀1), 柿木園拓矢1)
1) 東京工業大学 物質理工学院

課題番号 :S-17-MS-0022
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :遷移金属酸水素化物の電子状態評価
Program Title (English) :Evaluation of the electronic property of the transition metal oxyhydrides
利用者名(日本語) :松井直喜1), 岩崎佑紀1), 柿木園拓矢1)
Username (English) :N. Matsui1), Y. Iwasaki1), T. Kakinokizono1)
所属名(日本語) :1) 東京工業大学 物質理工学院
Affiliation (English) :1) School of Materials and Chemical Technology, Tokyo Institute of Technology

1.概要(Summary )
 ヒドリドイオンと酸化物イオンが陰イオン副格子を形成する酸水素化物は、ヒドリドイオンの結晶格子への強い電子供与性により従来の酸化物系材料とは異なる電子物性が期待される。本申請では一連の遷移金属酸水素化物材料に対して、紫外可視近赤外分光測定によりバンドギャップと近赤外域の吸収の有無を確認した。初めに、既知のチタン酸バリウムにヒドリドをドープした酸水素化物BaTiO3−xHxの紫外可視近赤外分光測定を行い、ヒドリドイオンの有無によるバンドギャップの変化を観測した。その後、新たに合成したヒドリドイオンを含有するアパタイト型遷移金属酸水素化物に対して同様の測定を行い、ヒドリドドープの影響を検討した。
2.実験(Experimental)
 BaTiO3−xHx : BaTiO3とCaH2を混合した後、所定の温度にて水素雰囲気下の焼成管内で焼成して、目的の試料を得た。LaSr4(SiO4)3CoH : 所定比の原料La2O3, SrH2, SrO, SiO2, CoOを遊星ボールミルによる機械混合した後に、岩塩カプセルに封入し、キュービックアンビル型の高温高圧発生装置を用いて、3 GPa、1000 °Cの条件下で合成した。得られた試料の相同定をXRD測定により行った。粉末試料に対して、UV-Vis-NIR測定(日立分光光度計U-4100)の反射率測定による吸収端よりバンドギャップを算出した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 Fig. 1(a)にチタン酸バリウムおよび、ヒドリドをドープしたBaTiO3−xHxのUV-Vis-NIRスペクトルを示す。チタン酸バリウムにおいて、波長362nm近傍に吸収端が観測され、バンドギャップ3.42 eVと算出された。一方で、ヒドリドをドープしたBaTiO3−xHxは全波長において光吸収を示し、光学的バンドギャップが存在しないことが示唆された。これは既報のヒドリドドープした試料における金属的な電気伝導と一致する[1,2]。Fig. 1(b)に合成したアパタイト型構造の遷移金属酸水素化物LaSr4(SiO4)3CoHのUV-Vis-NIRスペクトルを示す。BaTiO3−xHxと同様に、全波長において光吸収を示した。光学的バンドギャップは存在しないことから、金属的電気伝導挙動などが期待される。今後は正・逆光光電子分光測定、およびDFTにより状態密度の計算により、電子状態の評価を継続して行なう。

4.その他・特記事項(Others)
[1] T. Yajima, et al., J. Am. Chem. Soc., 134, 872 (2012).
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

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