利用報告書

集合体を形成する光応答性イオンの合成
山門陵平1), 前田大光2)
1) 山形大学大学院有機材料システム研究科, 2) 立命館大学生命科学部

課題番号 : S-17-NU-0018
利用形態 : 技術相談・技術代行・機器利用・共同研究
利用課題名(日本語) : 集合体を形成する光応答性イオンの合成
Program Title (English) : Synthesis of Photoresponsive Charged Species Providing Assembled Structures
利用者名(日本語) : 山門陵平1), 前田大光2)
Username (English) : R. Yamakado1), H. Maeda2)
所属名(日本語) : 1) 山形大学大学院有機材料システム研究科, 2) 立命館大学生命科学部
Affiliation (English) : 1) Graduate School of Organic Materials Science, Yamagata University, 2) College of Life Sciences, Ritsumeikan University

1.概要(Summary)
 電荷を有するπ電子系は、イオン間相互作用を基盤とする次元制御型集合体を構築し、周辺修飾および分子形状に起因した多様な集合形態や機能の発現が期待できる。本研究では外部刺激による集合形態の制御を目的とし、光応答性イオン種の合成を試みた。実際に、さまざまな置換基を有するアゾベンゼンカルボン酸を合成し、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAOH)で処理することで、アゾベンゼンカルボキシレート誘導体をTBA塩として得ることができた。得られた誘導体の光応答性および集合体形態について評価し、たとえば、3,4,5位にヘキサデシル基を導入した誘導体は、365 nmの紫外光および436 nmの可視光照射によって可逆な結晶−結晶相転移を示すことを見出した。XRD回折ピークおよび吸収測定から、これらの相転移はアゾベンゼンのtrans–cis光異性化に由来することを明らかにした。1) さらに、アニオン応答性π電子系であるジピロリルジケトンホウ素錯体との会合体を形成することにも成功し、この時構築する集合体は光に安定であることを明らかにした。2)

2.実験(Experimental)
 測定サンプルは適切な有機溶媒中で調製し、溶媒を除いた状態のものを使用した。1H NMR測定よりイオンペアの形成を確認し、全自動元素分析装置(Perkin-Elmer 2400)を用いて純度の確認を行った。光誘起相転移は、サンプル内部まで光が届くような8 mのスペーサーを用いたサンドイッチ状セルにサンプルを充填し、紫外光および可視光照射下でのXRD測定(FR-E)により検証した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 元素分析によって得られた結果は、それぞれ0.8–1.2当量の水分子を含んだ理論値と一致したことから、高い純度を確認した。また、3,4,5位にヘキサデシル基を導入した誘導体の光照下でのXRD測定においては、3.8 nmの繰り返し構造を有する結晶性ラメラ構造から、3.4 nmの繰り返し構造を有する結晶性ラメラ構造への結晶−結晶相転移を見出し、照射する光の波長を切り替えることで可逆であることを明らかにした。さらに、アニオン応答性π電子系との会合体は、光照射によって集合形態が変化しないことから、光に安定な集合体であることが分かった。これはアニオン応答性π電子系を導入することで光異性化に必要なフリーボリュームが失われたため、もしくはアゾベンゼンからアニオン応答性π電子系へのエネルギー移動によって異性化が制御されたと考えられる。

4.その他・特記事項(Others)
謝辞: 本研究は、文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「高次複合光応答」(No. 26107007) の補助を受けて行われた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) R. Yamakado, M. Hara, S. Nagano, T. Seki, and H. Maeda, Chem. Eur. J. Vol. 23 (2017) p.p. 9244–9248.
(2) R. Yamakado, M. Hara, S. Nagano, T. Seki, and H. Maeda, Chem. Lett. Vol. 47 (2018) p.p. 404–407.
(3) R. Yamakado, M. Hara, S. Nagano, T. Seki, and H. Maeda, 2017年光化学討論会, 平成29年9月5日.

6.関連特許(Patent)
なし。

©2019 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.